「うちは普通の家庭だから相続でもめない」は間違い?
家庭裁判所に持ち込まれる相続争いのうち、遺産額1,000万円以下の案件が全体の3割以上を占め、遺産額5,000万円以下の案件が全体の7割――
これは最高裁の統計にも出ている、れっきとした事実です。
実は、相続でもめるのは「何億も資産がある家」ではなく、“ちょっとした不動産”と“数百万円の預貯金”がある家なんです。
特に不動産、なかでも「実家の戸建て」が、争いの火種になりやすいのです。
【ケース1】都内の戸建てと現金300万円──評価額は高いが…
東京都内に戸建てを所有していたAさん。
亡くなった時の遺産は以下の通りでした。
- 土地・建物(小田急線沿線/評価額5,000万円)
- 預金:300万円
- 相続人:配偶者と子ども3人
子どもたちの意見は分かれました。
- 長男(同居):この家に住み続けたい
- 長女:持分相当の現金が欲しい(評価額の1/4=約1,000万円)
- 次男:売って分けたい(現金主義)
しかし、現金は300万円しかありません。
家を売れば分けられるが、同居の母と長男は住めなくなる──
結局、家庭裁判所の調停にまで発展しました。
【ケース2】地方の戸建てと現金800万円──評価額が低すぎて揉める
一方、山間部の一軒家(築40年・最寄り駅まで車で30分)に住んでいたBさん。
遺産は以下の通り。
- 土地・建物:評価額200万円(売却困難)
- 預金:800万円
- 相続人:妻と子2人
この場合、実家は資産価値が低いため、事実上「預金をどう分けるか」が相続の焦点になりました。
ところが、同居していた長男は「自分が家と土地の管理をしているのだから、預金は多めに欲しい」と主張。
妹は「評価の低い土地は要らない、預金を均等に分けて」と反発。
こちらも遺産分割協議がまとまらず、兄妹の関係がこじれる結果となりました。
どうすればいい?対策は「不動産+少額現金」こそ必要!
① 遺言書を作成しておく(分け方を明示)
例:
- 自宅は同居の長男に相続
- 預金300万円は次男と長女に150万円ずつ
- 遺留分を考慮した金額調整を付記
書式や内容は「自筆証書遺言」でも可能ですが、公正証書遺言の方が信頼性・手続きのスムーズさは段違いです。
② 生命保険で「現金」を補う
不動産の評価額は高くても、現金が足りなければ分けようがありません。
生命保険は相続人ごとの受取人を指定でき、遺産分割の対象外になるため、現金対策に非常に有効です。
例:
- 長女と次男にそれぞれ300万円ずつの保険金
→ 家は長男、現金は他の兄弟、でバランスが取れる
③ 生前贈与や「家族信託」で管理と分配を分ける
不動産の所有と使用の権利を分けて管理できる「家族信託」も検討対象です。
たとえば、「家の所有権は母に残しつつ、管理と運用は長男に任せる」といった柔軟な設計が可能になります。
まとめ:家がある=安心、ではない!
相続でもめないためには、
- 財産の金額よりも「分け方」「分けにくさ」
- 不動産は評価額も、実際の使い道も、地域で全く違う
- 相続人同士の関係性を見越した準備
が重要です。
「普通の家」と「少しの現金」が、一生モノの兄弟げんかになることも珍しくありません。
「まだ早い」と思わず、今からできる対策を、ぜひ考えてみてください。
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