はじめに――iDeCoって聞いたことある?でもよく分からない!

最近よく耳にする「iDeCo(イデコ)」という言葉。テレビやネットの広告で「老後資金におすすめ!」「節税できる!」といったフレーズを見たことがある方も多いのではないでしょうか。

でも、実際に制度の中身まで理解している人は少数派かもしれません。「なんだかお得そうだけど、難しそう」「どうせ投資でしょ?損したらイヤだし…」と敬遠してしまっている方もいるはずです。

でも、ちょっと待ってください。
iDeCoは、国が用意した「節税しながら老後資金を積み立てる」ための制度。しかも、始め方は意外とシンプルで、投資経験ゼロの方でも利用可能なんです。

このコラムでは、

  • iDeCoの仕組み
  • 誰が入れるのか
  • どれだけ税金が安くなるのか
  • 注意点やデメリット
    などを、初心者でも理解できるように、でも中身はしっかり専門的に解説していきます。

老後資金の不安がつきまとう時代だからこそ、「将来の自分への仕送り」として、iDeCoという選択肢を一緒に見ていきましょう。

iDeCoの仕組みをざっくり解説!

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、ざっくり言えば、「自分で自分の年金をつくる制度」です。
公的年金(国民年金や厚生年金)に上乗せして、自分で掛金を積み立てていくスタイルになります。

■国の年金だけでは足りないかも?

日本の年金制度は、「公的年金」と「私的年金」の二本柱で構成されています。
公的年金は老後の生活費の「最低限」をカバーする仕組みですが、少子高齢化の影響もあり、「年金だけで安心」と言えない時代になっています。

そこで、登場するのがiDeCo。
これは国が用意した「自分で年金を積み立てる制度」であり、しかも税制優遇までついてくるのが特徴です。

■掛けた金額を自分で運用する

iDeCoでは、毎月決まった金額(5,000円以上、1,000円単位)を積み立てていきます。
そのお金を、自分で選んだ「運用商品」(たとえば、定期預金や投資信託など)で運用していきます。

「えっ、投資するの?」と驚くかもしれませんが、元本保証の商品(定期預金など)も選べるので、リスクを抑えた運用も可能です。逆に、長期的にリターンを狙いたい人は、株式中心の投資信託などを選ぶこともできます。

■運用したお金は60歳以降に受け取れる

iDeCoで積み立てたお金は、原則60歳になるまで引き出すことができません。これはデメリットにもなり得ますが、裏を返せば、将来の自分のために「強制的に貯められる」仕組みとも言えます。

受け取りは「一時金」としてまとめて受け取る方法と、「年金形式」で少しずつ受け取る方法があり、どちらにも税制上の優遇措置があります(これについては第4章で詳しく解説します)。

誰が入れるの?――加入資格をチェックしよう

iDeCoは誰でも入れるわけではありません。
「公的年金に加入している人」が基本的な対象ですが、職業や立場によって、加入可否や掛金の上限額が異なります

自分がどのパターンに当てはまるか、チェックしてみましょう。

【A】自営業・フリーランスなど(国民年金第1号被保険者)

  • 加入OK!
  • 月額上限:68,000円

自営業者やフリーランスは公的年金が国民年金だけのため、老後の備えが少なくなりがち
その分、iDeCoで積み立てられる金額の上限も高く設定されています。

※注意:国民年金の「付加年金」や「国民年金基金」との併用時には、掛金合計で68,000円が上限となります。

【B】会社員(厚生年金加入者)

  • 加入OK!
  • 月額上限:12,000円〜23,000円

会社員の場合、勤務先の制度によって上限額が変わります。

  • 企業年金なし:月23,000円まで
  • 企業型確定拠出年金(企業型DC)のみ:月20,000円まで
  • 企業年金(厚生年金基金・確定給付年金など)あり:月12,000円まで

勤務先がどの制度に加入しているかは、人事部に確認しましょう。

【C】公務員

  • 加入OK!
  • 月額上限:12,000円

以前はiDeCoに入れなかった公務員も、2017年から加入可能になりました。ただし、上限は会社員よりも低く抑えられています。

【D】専業主婦(夫)・パート主婦など(国民年金第3号被保険者)

  • 加入OK!
  • 月額上限:23,000円

配偶者の扶養内で働く人や専業主婦(夫)も、条件を満たせばiDeCoに加入できます。
年収が低い場合でも、節税より「老後資金作り」が主な目的になります。

【E】60歳以上の人

iDeCoは、原則として60歳までの人が加入できます。
ただし、60歳以上でも国民年金に加入している人(任意加入者など)は、一定の条件で加入可能です。

【F】未成年・学生など

基本的に国民年金の保険料を払っていない人(=未加入者)はiDeCoに入れません。
学生でも、自分で国民年金に加入して保険料を払っていれば対象になる場合もあります。

税金がこんなにお得!iDeCoの3つの節税ポイント

iDeCoの最大の魅力は、なんといっても税制優遇がフルコースで受けられること
「節税できる」と一言でいっても、実は3つの異なるタイミングで税金が軽減されます。

節税ポイント① 掛金が「全額」所得控除になる!

iDeCoで積み立てた掛金は、全額が所得控除の対象になります。
つまり、支払った分だけ課税所得が減る=所得税と住民税の負担が軽くなる、という仕組みです。

たとえば、年収500万円の会社員が月23,000円(年間276,000円)をiDeCoで積み立てた場合:

  • 所得税率10%+住民税率10%と仮定すると
    → 年間約55,200円の節税になります!

所得控除なので、ふるさと納税や医療費控除と同じように「税率に応じてメリットが変わる」のがポイント。
高所得者ほど恩恵が大きくなります。

節税ポイント② 運用益が「非課税」に!

通常、投資信託や株式などで運用して利益が出ると、20.315%の税金(源泉分離課税)がかかります
しかし、iDeCoの中で得た運用益には、一切税金がかかりません

これがどれほど大きいかというと、たとえば10年間で50万円の運用益が出た場合:

  • 通常口座 → 約10万円の税金が差し引かれる
  • iDeCo → 税金ゼロ!50万円まるごと手元に残る

運用が順調だった場合、非課税効果は数十万円以上にもなり得ます。

節税ポイント③ 受け取り時にも税優遇がある!

老後に積み立てたお金を受け取るときにも、税金の優遇があります。
受取方法によって適用される制度が異なります:

  • 一時金(まとめて受け取る)場合
     →「退職所得控除」が適用
      → 勤続年数(加入期間)に応じて、一定額までは非課税に!
  • 年金形式で受け取る場合
     →「公的年金等控除」が適用
      → 年金収入にも一定額の非課税枠がある!

受け取り方の選び方や最適なタイミングによって、税負担を大きく抑える戦略も可能です。
(このあたりは、ぜひ税理士にご相談を!)

まとめ:iDeCoは「課税を3回も回避できる」制度!

タイミング通常の制度iDeCo
掛金支払い時所得控除なし所得控除あり
運用中運用益に課税(20.315%)非課税
受け取り時そのまま課税対象控除制度で節税可能

注意点も知っておこう――iDeCoのデメリットとは?

ここまで読んで、「iDeCoってすごくお得な制度じゃん!」と思われた方も多いはず。
……ですが、ちょっと待ってください。
iDeCoにはいくつか“落とし穴”もあります。

制度の特徴をきちんと理解せずに始めてしまうと、「思ってたのと違う…」と後悔しかねません。
ここでは、特に注意したい4つのポイントを紹介します。

① 原則60歳まで引き出せない

iDeCoの最大の注意点、それは原則60歳まで資金を引き出せないということ。
つまり、急な出費やライフプランの変更があっても、積み立てたお金は「動かせない貯金」になってしまいます。

老後資金のためとはいえ、流動性のなさ(使い勝手の悪さ)は大きなデメリットです。

今後、家の購入、子どもが生まれる、など大きなライフイベントが待っているかも?という方は、手元の預貯金を確認し、余裕がある場合のみ、iDeCoをやってみる…というのをオススメします。

② 手数料がかかる(地味に痛い)

iDeCoは“自分で年金をつくる制度”なので、事務手続きや運営管理に関する手数料が発生します。
主なものは以下のとおり:

  • 加入時手数料(国民年金基金連合会へ)… 2,829円(初回のみ)
  • 運営管理手数料(毎月)… 金融機関によって異なる(例:171円〜数百円)

特に、毎月の手数料は積立額が少ない人には相対的に重くなるため注意が必要です。
金融機関を選ぶ際は「運営管理手数料が無料かどうか」も要チェック!

③ 投資リスクがある(元本保証でない商品も)

iDeCoでは、投資信託などの運用商品を選ぶことができますが、元本割れのリスクがあります。
つまり、せっかく積み立てたお金が、運用状況によっては減ってしまうこともあるということ。

もちろん、定期預金などの元本保証型商品を選べばリスクは抑えられますが、その分リターン(運用益)も少なめになります。

④ 加入上限額がある

先ほど触れた通り、iDeCoの掛金には職業ごとの上限額があり、「節税メリットを最大化したくても、限度がある」という点も見逃せません。

たとえば、公務員は月額12,000円まで、会社員でも企業年金の有無によって上限が変わります。

⑤ 将来的に、退職金控除や公的年金控除が減る可能性もある

iDeCoを受け取る際は、退職金としてまとめてもらうと退職金控除、年金としてコツコツ受け取ると公的年金控除で受け取る際の税金が軽くなるよ!とお話しました。

ですが、退職金控除については、現在縮小されそう??な動きを見せています。
まずは退職金控除についてを知りましょう!

2025年現在の退職金控除

退職所得の金額 = (収入金額 – 退職所得控除額) × 1/2

退職所得控除額 =
・勤続年数20年以下:40万円 × 勤続年数(最低80万円)
・勤続年数20年超 :800万円 + 70万円 ×(勤続年数-20年)

つまり、勤続年数20年以上だと、退職金控除が増えることになります。

退職所得の計算では、5年ルールと呼ばれるものがありましたが、令和7年から60歳になって一時金を受け取って(退職金控除)、65歳になって退職金を貰う(退職金控除)というのは令和7年からできなくなりました(5年ルールから10年ルールへ)

実は退職金控除、今どきの働き方に合わないのではないか?ということで、岸田政権下では見直しを検討されましたが、「サラリーマン増税」と批判が高まったことで見直しを断念した…という経緯があります。退職所得控除は老後資金に大きく影響を与えるので、要チェックです。

まとめ:iDeCoは「使い道をよく考えてから」始めよう

iDeCoは長期的に見れば非常にお得な制度ですが、短期的な資金の使い道やライフプランに影響を与える側面もあるため、始める前にきちんと理解することが重要です。

  • 無理なく続けられる金額か?
  • 老後まで引き出せない資金でも困らないか?
  • 手数料や商品リスクは許容できるか?

このあたりを確認してから、前向きに検討していきましょう。

iDeCoが向いている人

■ 30代〜50代の会社員・公務員

この層は収入が安定し、所得税・住民税の節税効果が大きいため、最もiDeCoの恩恵を受けやすい層です。
特に扶養控除や住宅ローン控除が減ってきたタイミングで、新たな節税対策として有効です。

■ 比較的高所得で、当面の生活に余裕がある人

所得控除による節税効果が年収に比例して大きくなるため、実質的に「税引き後の実負担がかなり軽くなる」のが魅力。
ふるさと納税などと組み合わせて節税戦略を組むのもおすすめ。

■ 貯金がある程度あり、当面の生活に余裕がある人

60歳まで引き出せない制度なので、「手元資金に余裕があること」は必須条件。
「余剰資金を将来の自分のために積み立てたい」という人にはピッタリです。

■ 老後の資金準備を確実にしたい人

iDeCoは“手を付けられない貯金”のような側面もあるため、つい浪費してしまうタイプの人にも向いています。

❌ iDeCoが向いていない人

■ 収入が不安定なフリーランス・個人事業主の一部

自営業者は月額上限が高い(最大68,000円)というメリットがありますが、収入が安定しない場合は毎月の負担が重くなる可能性も。
生活費に直結するような資金は別で確保を。

■ 20代前半の人・学生

老後資金よりも、まずは「貯金・自己投資・生活基盤の安定」が優先。
とはいえ、収入に余裕があり税率が上がってきたら、早いうちからの加入も検討の余地ありです。

■ 住宅購入など大きな支出が近い人

iDeCo資金は原則60歳まで引き出せないため、近い将来にまとまった支出がある人には不向きです。
まずは「手が届く場所にある資金」を優先的に確保しましょう。

■ 年収が低く、所得税・住民税がほぼかからない人

節税メリットが少ないため、NISAや貯蓄を優先した方が良いケースも多いです。
「非課税枠」は収入によって得られる恩恵が違う点に注意。

【表でまとめ】向いてる?向いてない?

タイプiDeCoの向き不向き理由
年収600万円の会社員(40代)◎ 向いてる節税効果が大きく、老後資金の積立にも最適
年収300万円の20代フリーター△ 微妙所得控除の効果が薄く、資金拘束が負担になる可能性
自営業で年収変動が大きい人△ 慎重に検討掛金負担が固定になるため、無理のない金額設定が必要
家を買う予定のある30代△ 様子見流動性がないので、現金確保が優先
収入が安定した公務員(50代)◎ 向いてる節税&老後対策に最適

iDeCoとNISA、どっちを選べばいい?それとも両方?

ここまで読んで「iDeCo、けっこう良さそうだな」と思った方。
でも同時に、こんな疑問も浮かんでいませんか?

「最近よく聞くNISAとは何が違うの?」
「どっちを先に始めたらいいの?」
「併用できるの?」

iDeCoとNISAは、どちらも“非課税”という共通のメリットを持っていますが、目的も仕組みも異なります。
ここでは、その違いや、どちらを優先すべきかの判断材料をご紹介します。

iDeCoとNISAの基本比較

項目iDeCo新NISA(成長投資枠+つみたて投資枠)
主な目的老後資金の形成資産形成・中長期の資産運用
非課税対象運用益・所得控除・受取時控除運用益(売却益・配当)
購入可能額上限あり(月5,000〜68,000円)年間360万円(成長枠+つみたて枠)
資金の引き出し原則60歳まで不可いつでも引き出し可能
節税効果所得控除による節税が大きい節税効果は「運用益非課税」のみ
対象商品投資信託・定期預金など株式・ETF・REIT・投資信託

どっちを選ぶ?目的で決めよう

老後のために「絶対に使わない貯金」をしたいなら → iDeCo

  • 節税効果が非常に大きく、税金対策+老後資金という面で有利
  • ただし、60歳まで引き出せないことを考慮する必要あり
  • お金があればある分だけ使っちゃう!というタイプの方にも向いています。

いつでも使える資産を増やしたいなら → NISA

  • 教育資金や住宅資金、緊急時の備えとしても使える
  • 利益が出ても非課税なので、“いつでも動かせる資産形成”に最適

おすすめ戦略:「まずはNISA、その後にiDeCo」

節税という観点だけで見るとiDeCoが非常に有利ですが、資金の流動性を犠牲にするため、最初から全力投球するのは危険です。

▶ 安定収入があり、ある程度貯蓄もある方

  • NISAで資産を増やしつつ
  • iDeCoで税金対策&老後の積立

という「併用戦略」がベスト。
NISAで自由に動かせる資金を増やしながら、iDeCoで“将来の自分年金”を確保するイメージです。

▶ 若年層や収入が少ない方

  • まずは新NISAのつみたて枠で少額からスタート
  • 収入が安定してきたらiDeCoにステップアップ!

まとめ:それぞれの役割を理解して、賢く使い分けよう

iDeCoとNISAは「どっちが正解」ではなく、目的と優先順位で選ぶべき制度です。

  • iDeCo → 老後資金+節税
  • NISA → 使い道自由な資産運用

しっかりと制度を理解し、自分のライフプランに合った選択をすることで、「税金に負けない資産形成」が実現できます。

将来のために、今日からできること

「老後2000万円問題」が話題になったのはもう何年も前のことですが、その不安は今も多くの人の心に残っています。
年金だけでは足りない。だけど、どう備えればいいのかわからない――。
そんな時代に登場したのが、国が後押ししてくれる自分年金制度「iDeCo」です。

これまでの章で、iDeCoのメリットや仕組み、デメリット、始め方などを見てきました。
ここで、もう一度ポイントを振り返ってみましょう。

iDeCoのここがすごい!

  • 掛金は全額所得控除! → 所得税・住民税が節税できる
  • 運用益は非課税! → 通常の投資よりもお得
  • 受け取りにも税優遇! → 退職所得控除や年金控除が活用できる

一方で、60歳まで引き出せないことや、手数料がかかること、投資リスクがあることなど、注意点もあります。

でも裏を返せば、それは「将来のために確実にお金を積み立てられる仕組み」だとも言えるのです。

今日からできる、たった一歩

「でもまだ始めるのはちょっと不安…」という方は、まずは資料請求からでもOKです。
金融機関の比較をして、自分に合った選択肢を知るだけでも一歩前進。

そして、収入やライフステージに応じて、

  • NISAと併用する
  • 少額から始める
  • 家計の見直しとセットで考える
    など、あなたらしいiDeCoの活用方法がきっと見つかるはずです。

最後に:将来のあなたに、仕送りしませんか?

iDeCoは、「将来の自分」に仕送りをするような制度です。
毎月5,000円からでも、コツコツ積み上げれば数十年後には大きな力になります。

今の生活も大事。
でも、“未来の自分の生活”も、同じくらい大事です。

税金に強い制度を、あなたの味方に。
さあ、将来の安心のために、今日から一歩踏み出してみませんか?

投稿者プロフィール

YFPクレアグループ
YFPクレアグループ
税理士法人、行政書士法人、社労士事務所などのグループです。
税制は複雑化していく一方で、税理士を必要としない人々の税に関する知識は更新されていない…と感じ、より多くの人が正しい税知識を得て、よりよい生活をしてもらえたらいいなぁと思って開設したサイトです。専門用語には注釈をつけたり、いつも払っているだけの税金のその先も知ってもらえたら嬉しいです。

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