毎年6月ごろ、会社からぺらっとした紙が配られますよね?
「なんか、よく分からんけど税金のやつか~」と、サラッと読み流してそのままゴミ箱直行…してませんか?
それ、もったいない!
その紙の正体は、ズバリ
「住民税決定通知書」(正式には「特別徴収税額の決定通知書」など)と呼ばれるもの。
会社員のあなたが、これから1年間、毎月の給与からいくら住民税を引かれるのかが、バッチリ書かれている重要書類なんです。
つまり、「今年のあなたへの課税メッセージ」。
ところがこの通知書、見た目が地味で文字がぎっしり。
しかも、「控除」「均等割」「所得割」など、聞きなれない用語が並んでいて、読む気を失いがち…。
でも安心してください。このコラムでは
「税金アレルギーでも読みたくなる!」
「読めばちょっと得した気分になる!」
をモットーに、会社員のための住民税通知書の見方をわかりやすく解説していきます。
読み終わるころには、「あ、この紙、ちゃんと読んどいてよかったな」と思えるはず。
一緒に“脱・なんとなく税金”を目指しましょう!
住民税ってどんな税金?ざっくり理解しよう
「住民税?ああ、なんか給料から勝手に引かれてるやつね」
そうです、それです。
でも、“勝手に”じゃありません。ちゃんと理由があって引かれてます。
住民税とは、自分が住んでいる地域(市区町村や都道府県)に払う税金のこと。
言い換えれば、「地元に納める会費」みたいなものです。
▷ 正式には「市民税」と「県民税」
住民税という名前でひとまとめにされてますが、実は中身は2つに分かれています。
- 市区町村に納める「市民税(または町民税・区民税)」
- 都道府県に納める「県民税(または都民税・府民税)」
それぞれに別々の計算がされて、合算して住民税として請求されます。
だから通知書にも「市民税」と「県民税」が別々に書かれているんです。
▷ 前年の所得に対してかかる
ここ、意外と知られていないポイント。
住民税は、「前年の所得」に対して課税されます。
つまり、2024年の収入に応じて、2025年6月から住民税が天引きされるというタイムラグがあるのです。
なので、「今年、転職して収入が減ったのに、住民税が高くてビックリ!」というのは、まさにこの仕組みのせい。
前の年に稼いでたぶん、今年の住民税が高い…というカラクリですね。
通知書のここを見よう!チェックポイント解説
いよいよ本題。
住民税決定通知書には、たくさんの数字と漢字が並んでいて、いかにも“読む気をなくすデザイン”ですが、大事なポイントさえ押さえれば大丈夫!
ここでは、会社員が見るべき項目をわかりやすく解説します。
① 所得金額欄:これ、去年の“もうけ”です!
通知書には「総所得金額等」という欄があります。
ここは、昨年1年間にあなたが得た所得の合計が書かれている場所です。
「所得」っていうと難しく聞こえますが、ざっくり言えば
収入(額面の年収)から必要経費や控除を引いた後の“課税対象”のこと。
会社員なら「給与所得控除」などが自動的に差し引かれています。
② 所得控除欄:税金を安くする“割引クーポン”たち
ここには、扶養控除・社会保険料控除・生命保険料控除など、
税額を軽くしてくれる各種控除の合計が載っています。
「ふるさと納税」や「iDeCo(イデコ)」をやっている人は、ここに反映されているか要チェック!
反映されてない?…それ、申告忘れてるかもですよ。
③ 均等割と所得割:住民税の2本柱
住民税は大きく2つに分かれます:
区分 | 内容 |
---|---|
均等割 | 所得に関係なく、みんな一律でかかる税金 |
所得割 | 前年の所得に応じて決まる部分。高所得ほど高くなる |
たとえば、「市民税の均等割が3,500円」「所得割が120,000円」といった具合に、それぞれ分かれて書かれているので、自分がどれくらい“稼いだ分で”払っているかがわかります。
④ 年税額と月額:1年間分?それとも今月分?
通知書には「年税額」と「月額」どちらも書かれています。
ここが一番みなさんの関心事ですよね!
- 年税額:この1年間で払う合計の住民税
- 月額:毎月、給与から天引きされる金額(=12分割)
「え!月に2万円も引かれるの!?」と驚いたら、前年の収入を思い出してみてください…。
⑤ 特別徴収と普通徴収:あなたはどっち?
会社員なら通常は「特別徴収」。
つまり、会社があなたの代わりに住民税を天引きして納付してくれている状態です。
もしここが「普通徴収」になっていたら、何らかの事情で会社を通じて天引きできなかったケース。
その場合、自分で納付書で支払う必要があります。
「高い…」と感じたときに確認すべきこと
住民税決定通知書を見て、つい口から出るひと言。
「え、住民税、高くない!?」
でもちょっと待ってください。
いきなりショックを受ける前に、いくつか確認しておきたいチェックポイントがあります。
① 所得控除がきちんと反映されてる?
通知書の「所得控除」欄、ちゃんと見ましたか?
・扶養家族がいるのに、扶養控除が入ってない
・保険料控除や配偶者控除が記載されていない
・ふるさと納税やiDeCoをやっていたのに反映されていない
こんなときは、会社の年末調整で漏れたか、もしくは確定申告し忘れてる可能性が高いです。
→心当たりがある方、今からでも遅くありません!市区町村に相談してみましょう。
② 昨年の収入が多かった…ってことは?
住民税は前年の所得に応じて決まるため、
「去年ちょっと頑張りすぎたな…」という人ほど、今年の住民税は高くなります。
・賞与(ボーナス)がいつもより多かった
・副業でガッツリ稼いだ
・一時金(退職金の一部など)をもらった
こうした“臨時の増収”もバッチリ反映されています。
つまり、頑張った証でもあるんですね(…とはいえ痛い…)。
筆者は増えた分は全部旅行で使ってしまって、翌年は…(お察し下さい)
③ ふるさと納税、控除されてる?
「ふるさと納税をやったのに、税金高くなってる気がする…」
よくある勘違いですが、ふるさと納税の控除は「翌年の住民税に反映される」仕組みです。
そして、控除として通知書に反映されるのは
・住民税の「税額控除」欄
・または「摘要欄」に記載された減額分
です。
ワンストップ特例制度を使った方も、年末調整や申告を忘れると適用されません!
ご自身の寄附額に応じた控除がちゃんと載っているか、要チェックです。
④ 他の所得が影響してる?
・株を売って利益が出た
・仮想通貨を換金した
・不動産を売却した
・退職して失業手当をもらうまでの間、別の収入があった
こうした「給与以外の所得」も、前年の収入として住民税に影響します。
「え、そんなのも…」と思った方、意外と多いんです。
⑤ 盲点!税率は10%だから!?
住民税は課税対象なら全員一律10%+均等割4,000円+森林環境税1,000円。
一方、所得税は累進課税で、収入が重い人ほど、重い税金を支払っています。
課税所得330万円以下(超ザックリ額面650万円前後くらい)だと、所得税率10%。
課税所得195万円以下(超ザックリ額面470万円くらい)だと所得税5%。
源泉徴収票で見た所得税額と、住民税決定通知の住民税を見たら「たっっかぁ~~~~!!!」と感じるかもしれません。
所得税の税率表を見ると「所得」と書かれています。日頃から源泉徴収票を見て、
「ふ~む。自分の課税所得は●●●万円か~」と把握している人は少ないのではないでしょうか?
ぜひ、この機会に、源泉徴収票の見方もお勉強下さい!
こんなとき要注意!住民税のよくある疑問
住民税決定通知書を見ていると、
「これって…合ってるのかな?」
「なんか変じゃない?」
とモヤっとする瞬間、ありますよね。
ここでは、会社員の方からよく聞かれる「あるある疑問」をQ&A形式でスッキリ解消していきます。
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引っ越したのに、前の市区町村から通知が届いたんだけど?
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「1月1日時点で住んでいた市区町村」が住民税の担当だからです。
たとえば、2024年3月に引っ越した人でも、2024年6月に届く通知書は「旧住所の市区町村」から発行されます。
住民税の計算は「1月1日現在の住所地」で決まるので、転居後すぐの通知書が“古い住所の役所名”でも驚かないでくださいね。
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会社を変わったばかり。住民税はどうなるの?
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前の会社から特別徴収がストップされていたら、「普通徴収」に切り替わることもあります。
転職や退職のタイミングによっては、住民税が自分で支払う方式(普通徴収)になる場合があります。
このときは、市区町村から納付書が自宅に届きますので、会社任せにせず自分で納付する必要があります。なお、新しい勤務先に引き継ぎされれば再び「特別徴収」に戻すことも可能です(会社側の手続き次第)。
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扶養が反映されてない気がする…
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たとえば、
- 子どもが大学を卒業して扶養から外れたのに、通知書には控除が残っている
- 逆に、結婚して配偶者を扶養に入れたのに、控除が載ってない
こんな時は、年末調整の申告ミスや、市区町村へのデータ反映のズレが原因かもしれません。
もし明らかに違う場合は、会社の総務担当や市区町村の税務課に確認を!
なお、0~15歳の子どもは扶養していても、扶養控除がありません。
「うちの子が扶養に入ってないです!」と会社の総務担当に言っても困惑させるだけなのでご注意を!
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「摘要欄」ってなにが書いてあるの?
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控除や特例の内訳、注意点が書かれています。
ふるさと納税の控除額、退職所得がある場合の扱い、災害減免の記載など、一見どうでもよさそうで、実は重要なことがこっそり書かれている欄です。
特に、「控除がちゃんと入ってる?」と気になるときは、この欄の記載が決め手になります。
意外と小さな文字で書いてあるので、ルーペ片手にどうぞ。
給与明細と通知書、こうやってつながってる
「住民税って、通知書に書いてあるのと、実際に引かれてる額って同じなの?」
そんな疑問、ありますよね。
実はこの住民税決定通知書と給与明細は、しっかりリンクしているんです。
では、どうつながっているのか?
給与明細を片手に、一緒にチェックしていきましょう!
給与明細の「住民税」欄=通知書の“月額”そのまま!
通知書には「年税額」と「月額」が記載されていますよね。
会社員の場合は、この「月額」にあたる金額が、そのまま給与明細の「住民税」欄に登場します。
たとえば、通知書に
「市民税・県民税 月額:18,500円」
と書いてあれば、毎月の給与明細でも
「住民税:18,500円」
としっかり引かれているはずです。
手取りが減った?その原因、第1位がこれ
「4月までは給料手取り25万円だったのに、6月から24万円に減った…」
「昇給したのに手取りが増えてない!?」
そんなときの犯人は、だいたい住民税です。
住民税は、毎年6月から天引き額が切り替わります。
つまり、住民税の「改定月」は6月。
ここで前年の所得に応じた税額に変わるため、「住民税が増えて、結果的に手取りが減る」という現象が起きやすいのです。
昨年より高い?昨年の給与明細と比べてみよう
手取りが減ったと感じたら、去年の6月以降の給与明細を引っ張り出してみましょう。
「去年は毎月15,000円だったのに、今年は18,000円…」
という感じで、どれくらい住民税が増減しているかを比較できます。
この“差額”の理由は、もうおなじみですね。そう、去年の収入です。
ボーナス月も住民税は引かれる?
はい、ボーナスからも住民税は引かれます。
ただし、あくまで「毎月の月額分」をボーナスの給与明細に含めて引かれているだけで、ボーナスに対して追加で住民税が課されるわけではありません。
※社会保険料はガッツリ引かれますが、住民税は定額です。
まとめ:通知書は、“来年”の自分のためのヒント
ここまで読んでいただき、お疲れさまでした!
「毎年6月に配られるけど、何となくスルーしてた」
「なんか怖そうで、ちゃんと読んだことなかった」
そんな住民税決定通知書、実は手取り額のカギを握る超・重要書類だったんです。
通知書は、税金の“成績表”
住民税決定通知書を一言でいうなら、
「去年、あなたがどれだけ稼いで、どんな控除を使って、結果いくら納めることになったか」という、いわば“税金の成績表”。
これを見れば、
- 前年の所得(稼ぎっぷり)
- 控除の反映状況(節税効果)
- 月々の天引き額(今後の手取り)
…ぜんぶ見えてくるんです。
「高い」も「安い」も、理由がある!
通知書は、ただの請求書ではありません。
読み解くことで、「なぜこの金額なのか?」の理由が見える化されます。
- 控除漏れを発見すれば、節税につながるヒントになるかもしれないし、
- 来年の住民税を下げたいなら、今からふるさと納税やiDeCoなどの節税対策を始めるきっかけにもなります。
通知書は、“未来の自分”へのメッセージでもあるんですね。
最後に:読まずに捨てるなんてもったいない!
見た目は地味、字も小さい、漢字も多い。
でも、住民税決定通知書は“自分のお金の流れ”を知る第一歩。
一度読み方がわかれば、来年以降も怖くありません。
むしろ、「お、今年は控除うまく使えてるな」なんて、小さな達成感を味わえるかも。
投稿者プロフィール

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税理士法人、行政書士法人、社労士事務所などのグループです。
税制は複雑化していく一方で、税理士を必要としない人々の税に関する知識は更新されていない…と感じ、より多くの人が正しい税知識を得て、よりよい生活をしてもらえたらいいなぁと思って開設したサイトです。専門用語には注釈をつけたり、いつも払っているだけの税金のその先も知ってもらえたら嬉しいです。