もう、ずーっとずーっと前ですが、大人気マンガ「推しの子」を読んでいたときにMEMちょが重曹ちゃんに

ルームツアーをすると部屋の中のもの全部経費になる!
と、言ってるセリフを聞いて思わず吹き出しました(笑)
おいおい、YouTuber MEMちょ!!それじゃダメだ!!税務調査でグサッとやられるぞ!と思わず突っ込んでしまいました。漫画の一節で誰も「YouTuberになって家の中のものぜーんぶ経費にしちゃおーっと!!」
とは思わないと思いますが、ここは一般人向け税の知識サイト「わかる税」ですから、YouTuberにも、YouTuber以外の人にもYouTuberの経費について知ってもらって、これからも好きなYouTuberがいる人はその方を応援してもらえたらいいし、お子さんや周りの人が誤った知識で税務をしようとしている人がいたら止めたり、当サイトを見せたりしてほしいなぁって思います。
経費とは?基本的な考え方を知ろう
「これは経費になりますか?」というご質問は、YouTubeやTikTok、インスタグラマーなどのコンテンツ配信者の方から非常に多くいただきます。
しかしこの問いに対して、税理士としてまずお伝えしたいのは、
“経費とはを知れば、それが経費か、自ずと見えてくる”ということです。
経費の基本ルール「事業に絶対必要な支出で、第三者からもそう判断されるか」
税法上、経費として認められるのは以下のようなものです:
経費の正しい定義
ここで重要なポイントは
- 直接性
- 必要性
- 客観性
- 収益性
この4点がすべて揃っている出費かどうか・・ということです。
たとえば…
- 撮影用のカメラ → 動画配信に不可欠。他人が見ても不可欠。かつ収益あり。 → 経費〇
- 編集ソフトのサブスク → 業務に使用 → 経費〇
- 自宅の冷蔵庫の買い替え → 料理系配信でもない限り、生活費 → 経費×
このように、“直接性、必要性、客観性、収益性”が大前提となるのです。
プライベートとの“境界線”が問われる
コンテンツ配信者の経費で難しいのは、「プライベートとの区別がつきにくい」支出が多いことです。
たとえば
- 洋服 → 配信用に買ったつもりでも、普段も着ていたら?
- 旅行 → ロケを兼ねているけど、家族も一緒だったら?
- 美容院 → 撮影のために整えたつもりでも、個人的なおしゃれとの区別は?
こうした“私的な要素を含む支出”は、「按分(あんぶん)」という手法を使って、一部だけを経費にするという考え方が用いられます。
※按分の例:家賃10万円のうち、撮影スペースとして使っている割合が20%なら、2万円のみ経費とする…みたいに、事業と私用で分けて一部経費にすることです。
コンテンツ配信者の“経費になるもの”の具体例
前章で触れたとおり、「業務に必要な支出」は経費になります。
ここでは、コンテンツ配信者が実際に使うことの多い経費を、ジャンルごとに具体的に解説していきます。
撮影・編集機材(カメラ、パソコン、マイクなど)
まず代表的なのが、撮影や編集のためのハードウェア。
- デジタルカメラ、スマホ(業務専用機)
- パソコン・タブレット
- 三脚、ジンバル、照明、グリーンバック
- マイク、音声インターフェース
これらは、配信という業務に不可欠であるため、原則として全額経費にできます。
ただし、パソコンやカメラのように10万円を超えるものは、「減価償却資産」として数年に分けて経費計上することになります。
通信費や編集に必要なサブスク(月額課金系サービス)
コンテンツ配信に必要なインターネット環境やサブスクも、業務に使っていれば経費となります。
- Wi-Fiやスマホの通信料(業務使用分)
- 動画編集ソフト(Premiere Pro、Final Cut Proなど)
- 音源ライセンス(Artlist、Epidemic Soundなど)
- 画像・動画素材サイトの利用料(Adobe Stock、Canva Pro など)
注意点:通信費やスマホ料金は私用との“按分”が必要です。
たとえば「業務に月4割使っている」と考えられるなら、4割分だけを経費とするのが適切です。
ただし、ほとんど事業にしか使ってないとしても5割を超えるとNG!
衣装・メイク・美容代(ジャンルにより判断)
非常にグレーな領域ですが、ファッション・美容系ジャンルの配信者であれば、一定の支出は経費になり得ます。
- 撮影用の衣装(普段着と区別がつくもの)
- 美容室代(企画そのものなら。【今流行りの美容院●●に行ってみた企画】など。普通に切ってるだけなら経費にならない)
- ネイル・まつエクなどの施術(美容企画と関連性があれば。ただし按分計算になる)
ただし、税務署の目線では「普段も使っていれば私用」と判断される可能性が高いため、ぶっちゃけ入れないほうが無難。
それでも経費に入れたい場合は按分計算。按分割合は弊社でもここはかなり繊細に判断するポイントです。
税理士がジャンルや企画内容、どのくらい使ったかなどを細かにヒヤリングして決めるので、ここで●%経費でーす!とかは全く言えません。
ぶっちゃけ、そのくらい難しくて、今までもいっぱい判例の出ているものです。
ですが、一つだけ、いれる方法がありまして、紹介した衣装やメイク道具は全て見た人にプレゼントする企画にしてしまうものですね。
きちんと発送した記録まで残しておけば全額経費にしても問題ないでしょう。
もちろん、配送料も全額経費です。
自宅を使う場合の家賃・光熱費の按分
自宅で撮影・編集している場合は、家賃や電気代の一部も経費になります。
- 賃貸の場合、自宅家賃の一部(撮影部屋が占める面積で按分)
- 電気代(作業時間の割合で按分。水道を使う事業内容以外は水道代は不可。ガスも不可)
- テーブル・インテリアなど撮影セット用備品
按分割合の根拠としては、間取り図・時間帯・写真などを用意しておくと説得力が増します。
打合せ費用、取材・ロケの交通費など
- 企業案件の打合せの際のカフェ代
- 撮影地までの交通費・宿泊費(※業務目的であることが明確なら)
- 取材のための施設入場料、体験料
プライベートの食事や旅行と区別できていれば、これらは立派な業務経費になります。
プライベートと区別をつける方法として、企画書を作っておきましょう。
経費に“できない”もある!!
コンテンツ配信者にとって、日々の支出は仕事に直結していることも多く、「これも経費にできるのでは?」と感じる場面は少なくないでしょう。
しかし、どんなに業務に関係していそうでも、税務上は経費として認められないものがあります。
また、「グレーゾーン」扱いになる支出も存在します。
家族旅行や私的な外出
たとえば、家族旅行に行った際に旅先で動画を撮影し、それを「Vlog」として投稿した場合――
- 「旅費も経費にできるはず」
- 「YouTubeに載せたから業務だ」
と思うかもしれませんが、これは要注意!!
旅行の主目的がプライベート(家族サービスやレジャー)であれば、たとえ動画を撮っていても原則経費にはできません。
投稿したからといって自動的に業務とは見なされないのです。
→ 経費化したいなら、事前に「仕事のための取材」として計画書を残しましょう。
プライベートの部分と撮影に要した部分を按分して根拠のある按分が必要です。
高級ブランド品や趣味性の強い買い物
- 高級バッグ
- 高額時計
- スニーカーコレクション
- ゲーム、フィギュア、雑貨 など
これらは、「紹介動画で使うから」という理由で経費にしたくなる方も多いのですが、“自分の趣味で買った”と見なされると否認されます。
特に、動画内で1度しか登場せず、その後はプライベートで使い続けているような場合、税務署としては「ただの個人消費」と判断するでしょう。
美容整形・脱毛・エステなど
美容ジャンルの配信者の方からの質問で多いのがこのジャンルです。
結論として、基本的には経費として認められにくい支出です。
理由は明快で、「一般人でも自己負担しているもの=生活費の延長」とされるためです。
よほど特殊な演出(たとえば整形過程をシリーズで動画化する等)であれば、業務性を主張できる余地もあるかも?ですが、かなりハードルは高いです。
飲食代や交際費は“相手”が大事
- 案件の打ち合わせならOK。レシートにはその場にいた人の会社名、名前も記載しておくこと!
- 友人とのランチはNG
- 視聴者とのオフ会は、内容次第で△
「全部仕事のつもりだった」では通用しません。
誰と、どんな目的で会っていたのかを帳簿にメモしておくことで、正当性を示す材料になります。
正直、経費性については、一般的な個人事業主とあまり変わらない
YouTuberは動画にすればなんでも経費にできる!みたいなことを言う人もいるのですが、実際にはNO!!だと感じております。
服とかも志村けんのバカ殿や、小林幸子もびっくりな電飾付きドレスくらい突き抜けてて、私服ではとてもじゃない!それ着て街なか歩けない!…というものしか経費にはなりません。毎回服を変えたい!おしゃれに見せたい!と言っても、

それが事業となんか関係あります???
と、言われるだけです。
ここで、経費の“直接性、必要性、客観性、収益性”を思い出してほしいです。「必要性」がない、「客観性」もない…となります。
トラブルを防ぐために今すぐできること!
経費処理は、うまくやれば節税になりますが、間違えると税務調査で痛い目を見るリスクがあります。
そのため、日ごろから「税務署に突っ込まれても説明できるか?」という意識で準備しておくことが大切です。
ここでは、コンテンツ配信者が今日からできる具体的な対策を紹介します。
レシート・領収書は必ず保管&一言メモを添える
経費の証拠として、レシートや領収書の保管は大前提です。
紙でも電子データでもOKですが、領収書の裏・クラウドメモ・会計ソフト内の備考欄などに記録は必須です。
数年後の税務調査でも、自分で説明できるようになります。
更に企画書などと一緒に保管をしましょう。
どの企画で使っているものなのかや、何に使っているかなどもわかりやすくしましょう
プライベートと事業用の財布を分ける
「仕事とプライベートのお金がごちゃまぜです」という方、かなり多いです。
しかしこれは経費管理の最大の落とし穴。
- 事業用の銀行口座・クレジットカードを別で作る
- Amazonのアカウントも業務用と私用で分ける
- 家計簿と帳簿をごちゃまぜにしない
このだけで、経費の記録・説明・確定申告が圧倒的にラクになります。
帳簿は“真面目すぎるくらい”でちょうどいい
会計ソフトに入力するだけでは不十分です。
税務署は「その数字の根拠」を見ます。
- 経費にした理由が分かるような補足を入れる
- 写真、動画URL、撮影スケジュール、企画書などの“証拠”を残す
- 按分の基準(たとえば家賃なら面積、通信費なら使用時間)をきちんと記録
ココで重要なのは客観性がきちんとあるかどうかです。
赤の他人が見ても「確かにこれがないとこの動画、この収益は生まれてないね」と、確信もって言えるかどうかです。
ここまでやっておけば、調査が入っても“誠実な納税者”として評価されやすくなります。
コンテンツ配信者は令和5年
税務調査でいっぱい追徴課税された業種 第3位!
サラリーマンの副業としてもコンテンツ配信は大人気ではありますが、税務調査のターゲットとしても大人気なんです!
無申告も多く、経費の認識も甘い。その上、売上はほぼ見えてる(再生回数が丸見えだから)。
税務調査しやすい状況であります!
業界全体でクリアにしていかない限りは今後も減らないのではないかなぁと思います。
経費を正しく使えば、節税にも、事業の拡大にもつながる
適切な支出を経費として処理できれば、課税所得を減らすことができ、結果として税金が軽くなります。
これは事業を継続していく上で、非常に重要な“武器”になります。
たとえば:
- 動画の質を上げるために機材を購入
- 時間を節約するためにソフトや外注に投資
- 撮影スペースの環境改善のための支出
こうした支出を経費として処理することができれば、納税もしつつ、キャッシュフローも守れるわけです。
「税金のことはよく分からないから、なんとなく…」では、通用しません。
でも逆に、正しい知識を持っていれば、税務調査にも怖がる必要はありません。
「これ経費になるかな?」と思ったら、
直接性、必要性、客観性、収益性の4つが揃ったかどうかを考えてみましょう!
常にココに戻るようにしましょう!!
投稿者プロフィール

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税理士法人、行政書士法人、社労士事務所などのグループです。
税制は複雑化していく一方で、税理士を必要としない人々の税に関する知識は更新されていない…と感じ、より多くの人が正しい税知識を得て、よりよい生活をしてもらえたらいいなぁと思って開設したサイトです。専門用語には注釈をつけたり、いつも払っているだけの税金のその先も知ってもらえたら嬉しいです。
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