2025年(令和7年)の年末調整から、
「配偶者特別控除」と「特定親族特別控除」が所得に応じて段階的に変わるようになりました。

配偶者や子どもの所得が5万円ズレるだけでも、納税者本人の控除額が変わる仕組みです。
では、もし年末調整で記入した金額と実際の所得がズレていた場合――どうなるのでしょうか?

1. 年末調整は「見込み」でOK。でもズレることもある

年末調整のときに申告する配偶者や子どもの所得は、まだ年末時点では確定していません。
そのため、見込み額で申告してOKです。

「妻はパートで120万円くらいの予定です」
「大学生の子どもはアルバイトで60万円くらいかな」

こうした“ざっくり見積もり”で提出しても問題はありません。
ただし、実際の所得と差が出ると、あとで修正が必要になることがあります。

2. ズレていた場合、どうなる?

ここからが現実的な話です。
多くのサラリーマンが誤解していますが、年末調整で完結ではありません。

● 税務署・市区町村が「突合」している

年末調整の情報(源泉徴収票)は、会社から税務署に提出され
同時に住民税用データとして市区町村にも送られます

一方、配偶者や子どもがパート・アルバイト先で受け取る源泉徴収票も、
それぞれ税務署・役所に提出されています。

つまり、税務署や役所は両方の情報を突き合わせて
「申告された所得」と「実際の所得」にズレがないかチェックしているのです。

3. 半年〜1年後に「修正依頼」が届く!

もしズレがあれば、翌年または翌々年に
市区町村や税務署から**「扶養控除等の修正依頼」**が届くことがあります。

「昨年の年末調整で申告された扶養親族の所得が、実際と異なっています。修正をお願いします。」

という文面の通知が、突然届くパターンです。
しかも厄介なのは――

どの親族・どの金額がズレているのかを役所は教えてくれません

個人情報保護の観点から、「ご自身で確認してください」としか言えないのです。
そのため、通知を受け取った側は、

  • 誰の所得が違ったのか
  • どの金額が間違っていたのか

を一から調べる必要があり、非常に手間がかかるのです。

4. 修正はどうやって行うの?

修正依頼が届いた場合、基本的には次のどちらかで対応します。

対応方法内容
① 修正申告(または更正の請求)所得税を修正。税務署へ提出。
② 住民税の再計算市区町村の指示に従い、住民税を再精算。

多くの場合は市県民税事務所から呼び出されて、修正して、追加で納税して終わりになるかと思います。ただし、差額が大きくなれば、税務署から呼び出されて、所得税の修正をする可能性もあります。
その場合は、サラリーマンには余り馴染みのない、確定申告をすることになります。

5. よくある「ズレ」の原因

原因内容
パート収入が予想より増えた年末にシフトが増えた、ボーナス支給など
子どものアルバイト収入が上振れ夏休みや春休みで勤務が増えた
給与所得控除の計算ミス年収ではなく「所得」で申告すべきところを年収で書いた
他の扶養との混同配偶者・子ども・親などの欄を取り違えた

6. 実務上の注意点(税理士が教える“現場の知恵”)

  • 控除の金額は5万円ごとの段階制
  • そのため、控除の金額は数万円の差でもズレる可能性あり
  • 税務署や役所からの通知は半年〜1年遅れで届く
  • 通知が来ても「どこが違う」とは教えてくれない(個人情報保護)
  • 結果的に、修正には時間と手間が非常にかかる

したがって、最初の年末調整でできるだけ正確に見積もっておくことが重要です。
特に、パートやアルバイト収入が変動しやすい家庭は、11月時点で収入見込みを再確認しておくと安心です。

7. まとめ|ズレると通知が来る。ズレを防ぐには「見込みの精度」が命

2025年からの特定親族特別控除・配偶者特別控除は、
所得に応じて段階的に変わる「スライド制」に。

そのため、ほんの数万円のズレでも、控除額が変わり、
半年〜1年後に役所や税務署から修正依頼が届くことがあります。

税務署はどこが違うか知っていても、教えてくれません。
修正に手間をかけないためには、「最初の申告をできるだけ正確に」。

家族の収入を早めに確認しておくことが、最も確実な対策です。

投稿者プロフィール

YFPクレアグループ
YFPクレアグループ
税理士法人、行政書士法人、社労士事務所などのグループです。
税制は複雑化していく一方で、税理士を必要としない人々の税に関する知識は更新されていない…と感じ、より多くの人が正しい税知識を得て、よりよい生活をしてもらえたらいいなぁと思って開設したサイトです。専門用語には注釈をつけたり、いつも払っているだけの税金のその先も知ってもらえたら嬉しいです。

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