日本には「環境のため」という名目で国民に広く課される2つの負担があります。
ひとつは 再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)
所轄は経済産業省(資源エネルギー庁)で、電気料金に上乗せされる形で徴収されています。
もうひとつは 森林環境税。所轄は総務省・環境省・林野庁で、住民税に年額1,000円を上乗せして全国民から徴収されています。

最近では、阿蘇山に巨大なメガソーラーを作られ、釧路湿原にメガソーラーを作られ、鴨川の山にメガソーラーを作る計画もでています。
これは自然破壊をしてて、全然エコじゃない!という意見もあります。
でも、全然エコじゃないことをしているのに、一方では森林環境税を取られている…なぜ??

どちらも「環境対策」の一環ですが、所轄官庁が違うために、政策は別々に進められ、国民は二重で負担をしつつ矛盾した政策をとっているのが実情です。まずはその所轄官庁が違うことによって政策が別々で行われる…ということを他の視点でみてみましょう。

【実体験】西表島と縦割り行政

ここで、私自身の経験をお話ししたいと思います。

私は 西表島 が大好きで、毎年訪れるほどの“心のふるさと”です。
「あと半年で西表」「あと3ヶ月頑張れば西表」…出発前から胸を躍らせ、出発2週間前には「もうすぐ終わってしまう」と鬱になるほど。そんな大好きな場所です。

西表島の象徴的なスポットが 浦内川
カヤックでマングローブを進めば、サガリバナが川面に浮かび、夜はSUPの上で寝転ぶと満天の星空に包まれる。
静けさの中に聞こえるのは動物の鳴き声だけ。心地よい静けさで心がほどけていきます。
島を離れるときには「お邪魔しました」と島全体にお辞儀するほど、神秘的な自然が広がっています。

そんな場所に「世界自然遺産登録のために橋をコンクリートで作る」という話を耳にしたときは、正直絶句しました。
「自然遺産を守るために自然を壊すなんて、本末転倒じゃないか!」と。
(島民たちはせめて木道に!!と主張していましたが、安全性の確保のため行政はコンクリートで!という話でした。)

一度は却下されたものの、2021年、西表島は奄美大島、徳之島、沖縄北部とともに無事に世界自然遺産に登録されました。
実は却下されたのは、西表島の観光客が多すぎる問題があったようなので、逆に却下がいい方向に向いたのでは?と思ってます。
保護区域への立ち入りには課金制、トイレは携帯トイレ義務、カヌーの放置禁止…などが決まったようで、今のところ心配していたコンクリートとは全く違う方向性ばかりが見えているので、世界自然遺産サマサマだと感じております。
もう少ししたら、アフターコロナ初の西表島に再上陸!世界自然遺産で実際どうなったのか、確認して報告しますね!

さて、世界自然遺産の裏にはもうひとつの“縦割り”がありました。
1995年、沖縄米兵少女暴行事件をきっかけに、普天間基地の返還問題が浮上。防衛庁は基地の移転先を探し、候補に挙がったのが沖縄北部の自然豊かな地域でした。
一方で環境省は「やんばるの森を基地にするなんてとんでもない!守るために世界自然遺産にしよう」という動きを強め、結果的に奄美大島・徳之島・西表島を含めてパッケージで登録にこぎつけたという経緯があります。これには人口が多すぎる沖縄本島の北部だけでは世界自然遺産に認められないという理由がありました。

防衛庁は他国からの侵略行為から守るために。
環境省は自然豊かな森や海を守るために。
どちらも「日本国民と領土を守る!」という大事な仕事を実行しています。

防衛庁は尖閣諸島など一発触発エリアが近い沖縄の基地を手放すわけには行きません。
また、台湾と中国の緊迫した関係も他人事ではありません。日本を守るためには基地がそこにある必要がある!その主張もごもっともだと思います。

つまり、防衛庁と環境庁という2つの官庁が、それぞれが任されている仕事を真面目にしているがゆえに衝突し、結果として住民や自然に矛盾が降りかかるという構図でした。

再エネ賦課金と森林環境税も同じ構図

西表島で見た「防衛庁と環境庁の綱引き」は、実は今の税制や料金制度にも通じています。

経済産業省は、エネルギーの専門官庁。
「脱炭素社会をつくる」「化石燃料からの脱却を急ぐ」――その使命感で再エネ推進に突き進みました。その結果が再エネ賦課金。電気料金という形で、毎月私たちの財布から確実にお金を取り出していきます。
一方で、東日本大震災以来、原発を動かせていないこの状況では電気不足は経済の停滞を生じます。
工場を動かすのも、暑い夏を乗り切るのも、電気が必要…それは否定出来ないと思います。
経済産業省は経済や産業を滞らせるわけにはいかない!その信念に則っていると言えます。

一方で、総務省と林野庁は違うアプローチをとります。
「CO₂を吸収する森を守ることこそ本当の環境政策だ」
「荒廃する山林を整備しなければ水害も防げない」
そう信じて作ったのが森林環境税。住民税に一律1,000円を上乗せし、全国民から徴収しています。

どちらも真剣で、どちらも正しい。
でも、問題はこの2つが全く協力しようとつながっていないことです。

再エネと森林。両方とも「カーボンニュートラル」「地球温暖化防止」という同じゴールに向かっているのに、

  • 経産省は「エネルギー」から。森林のことなんて専門外。
  • 総務省・林野庁は「森林」から。経済や産業のことは専門外。

と、バラバラに制度を作り、国民から別々にお金を集め、バラバラに政策を作っている。

つまり、国民は“環境”という同じ目的のために、電気料金と住民税の両方で二重に財布を開かされ、別々の政策をしているのです。

これは「どちらの省も悪くない」「両方必要」という話で済まされる問題ではありません。
むしろ、官庁がそれぞれの縄張りで一生懸命に仕事をしているがゆえに、制度が乱立し、肝心の国民負担は誰もトータルで調整していない。
その不幸な構図こそが“縦割り行政”の典型だと言えるでしょう。

とはいえ、こういうのの全体を見るための省庁より強い組織が必要じゃね?という声でできたのが「内閣府」です。
ところが、この内閣府が弱いのがこれまた問題。

内閣府の役割

内閣府は2001年にできました。縦割り行政を打破するためです。

内閣府は、各省庁の仕事を「またがる」テーマを総合調整するために置かれた組織です。
たとえば以下のような分野は、典型的に内閣府が調整役を担っています。

  • 経済財政政策(経済財政諮問会議)
  • 科学技術・イノベーション政策
  • 防災・少子化対策・男女共同参画
  • 沖縄・北方対策
  • 消費者行政

つまり「環境省・経産省・総務省がバラバラに動いて、国民に二重負担を強いている」といったケースは、本来なら内閣府が 司令塔として方向性を示し、各省庁の施策を束ねる べき分野に見えます。

しかし調整、出来ていないんです。

でもなぜ調整できていないのか?

理由はいくつかあります。

  1. 環境政策は“所管官庁”が強すぎる
    • 再エネは経産省の「エネルギー政策」のど真ん中。
    • 森林は林野庁(農林水産省の外局)の専権分野。
      → 内閣府が口を出すと「所管外だ」と反発されやすい。
  2. 予算権限の分散
    • 再エネ賦課金は経産省ルートで電気料金に上乗せ。
    • 森林環境税は総務省ルートで住民税に上乗せ。
      → お金の流れが完全に別で、調整するための“共通財布”がない。
  3. 内閣府自体は“調整役”にとどまり、強制力が弱い
    • 各省庁の合意をとりつける役割はあるけれど、最終的に「命令できる」権限まではない。
    • 縦割りを本気で崩すには、総理や官邸主導で強いリーダーシップを発揮しないと動かない。

結果的に、内閣府の存在感ヨワシ。
でも、森を司る環境省より、自衛隊を司る防衛庁より、経済を司る経済産業省より強い存在、皆さんわかりますよね?

財務省が強い理由

日本において、一番強い官庁は?と聞かれたら、多くの人が「財務省」と応えるのではないでしょうか?

財務法が強い理由はこんな理由です。

1. 予算編成権を握っている

第一に、国家予算の編成を握っている点です。各省庁は「これをやりたい」と新しい政策や事業のために予算要求を出しますが、最終的にその可否を決めるのは財務省の主計局です。予算がつかなければどんな立派な政策も動き出せません。つまり財務省は、各省庁の夢や計画に対して「実行できるかどうか」を最終的に裁定する立場にあり、その意味で絶対的なイニシアティブを持っているのです。

まさに、財務省が親で、各官庁はお小遣いをもらう子どものような関係性なんですよね。

2. 税制の主導権

さらに、税制の主導権も財務省に集中しています。与党税制調査会と二人三脚ではあるものの、実際に法案を設計するのは財務省の主税局であり、消費税や所得税、法人税といった国家財政の根幹を動かす権限を握っています。税は国民生活に直結するため、財務省の決定は日本経済そのものを左右すると言っても過言ではありません。

3. 国債発行権限

加えて、国債の管理も財務省(理財局)の仕事です。どれだけ国債を発行するか、どのように市場で消化するかを調整するのも財務省の腕にかかっています。国債発行は経済政策全体に波及するため、財務省は金融政策とも密接に絡みながら、事実上、日本経済全体に大きな影響力を及ぼしています。

子の独立!?各官庁は財務省を通らない省庁独自の財源を作りたい!

興味深いのは、再エネ賦課金や森林環境税のように「電気料金」や「住民税に上乗せ」といった 財務省を通らない“省庁独自の財源” を作るとき、財務省がここまで強い存在だからこそ、他の省庁は一つの本能的な動きを見せます。つまり、できるだけ財務省の財布に頼らず、自前の財源を確保しようとするのです。予算要求を通すたびに厳しい査定を受け、必要な金額が削られたり、場合によっては政策そのものが立ち消えになったりする。そうした経験を繰り返すうちに、各省庁は「財務省に頼らない道」を模索するようになりました。

経済産業省が再エネ賦課金を電気料金に上乗せする形で導入したのは、まさにその典型です。電力会社を通じて国民から直接徴収すれば、財務省を通さずに安定した資金源を手にできます。同じく林野庁や総務省が森林環境税を住民税に一律で上乗せしたのも、自前の財布をつくるための工夫だと言えるでしょう。

こうして生まれたのが、再エネ賦課金と森林環境税という二つの制度です。どちらも環境政策の一環として意義はある。しかし、背景にあるのは「財務省に握られたくない」という官庁の思惑でもあります。その結果、環境という同じ目的を掲げながら、国民にとっては電気料金と住民税という二重の負担になってしまったのです。

本来であれば、こうした縦割りを調整するのは内閣府の役割です。内閣府は、各省庁の壁を越えるべき政策課題について「総合調整」を担う存在として設けられました。環境やエネルギー、地方財政といった複数の省にまたがるテーマこそ、内閣府が全体の方向性を示し、一元的に舵を取るべき分野に見えます。

ところが現実には、内閣府には各省庁を強制的に従わせるだけの力がありません。調整役にはなれても、財布を握るわけでも、法律の細部を作るわけでもない。結局は経済産業省は経産省の論理で、林野庁や総務省はそれぞれの論理で動き、制度は別々に積み上がっていくのです。内閣府は交通整理役にとどまり、強力なリーダーシップを発揮できるのは総理や官邸が前面に立ったときに限られます。

つまり、日本の環境政策は「財務省に予算を握られたくない省庁の思惑」と「内閣府の調整力の限界」という二重構造の中で作られてきたのです。再エネ賦課金と森林環境税は、その縮図と言ってよいでしょう。

【まとめ】我々国民はどうすればいい?

再エネ賦課金と森林環境税は、それぞれの官庁が懸命に職責を果たした結果として生まれた制度です。経済産業省はエネルギーから、林野庁や総務省は森林からアプローチし、いずれも「環境を守る」という大義に基づいています。しかし、国民の視点から見れば、同じ目的のために電気料金と住民税の両方からお金を取られる「二重負担」の構造が出来上がってしまいました。

メガソーラーvs森林や湿原を守る!司令塔に働きがけよう!

では、どうすればいいのでしょうか。第一に必要なのは、環境政策を横断的に束ねる司令塔の強化です。内閣府が本来の役割を果たし、各省庁がバラバラに財源を作るのではなく、「環境」というテーマのもとに一元的な政策パッケージを設計する仕組みが必要です。総理や官邸が本気で主導しなければ、縦割りの壁は崩せません。

要は、総理や首相官邸はこの問題に本気になっていないのです。
この問題に本気になってもらわないといけないのです。
本気にさせるだけの動きを国民は取り続ける!
頑張る他ありません。

森林にお金を払おう!

なぜ、森林の持ち主がメガソーラーの会社に先祖代々の森林を売ってしまうか知っていますか?

森林はお金にならないのに、責任は重いからです。
森林は管理にお金も手間もかかるのに、放置をすれば荒れてしまい、土砂崩れが起こったり、川が濁る原因になったりもします。
それでいて、木材を切って売っても利益にはならない…
そんな負の資産。本人は都会で仕事しているのに、その負の資産のせいでいつまでも責任を押し付けられてしまう。
それなら二束三文でも売ってしまいたい。そういう人がいても責められますか?

そんな負の資産をどうにかしようとしているのが森林環境税です。
森林を管理出来る人を育てて、持ち主が不在でも管理されるようにし、更に国産の木材を使用するための税金です。

たった1000円の税金ですが、それで森林の持ち主が森林のまま所有しててくれるなら安いと私個人は感じております。

また、個人でも国産木材を使ったものを使う、とかも出来るかと思います。
我が家では積極的に国産木材を使ったものを購入したり、国産の木を使ったイベントには積極的に参加しています。

森林の持ち主が、「森林のまま持ってる方が得」という社会になったら、メガソーラーにする持ち主も、メガソーラーに山林を売る人も減ると思います。

大事なのは「知ること」

なぜ、森林や湿原がメガソーラーに変わっていくのか。

まず、知ることでしか対策は打てません。
知らない人が何を言っても、それぞれの正しさのもとで働く人の決断には届かないのではないか?と思います。
ぜひ、知っていただき、その上で言動を変えていく…。
これが大事です。私も知見を広げられるように、努力します。

森林環境税をもっと知りたい方向け

メガソーラーと森林環境税は一見矛盾しているようで、以前からある「縦割り行政」の弊害でした。

メガソーラー反対派の方、ぜひ、森林環境税についてもっと知ってみたいと思いませんか?

使い道は?東京とかほとんど森林ないのに何に使っているの?などのギモンは浮かびませんか?

ぜひ、これらの疑問はこちら!「森林環境税 高すぎ!?目的と使い道を紹介!」をご拝読下さい!

投稿者プロフィール

YFPクレアグループ
YFPクレアグループ
税理士法人、行政書士法人、社労士事務所などのグループです。
税制は複雑化していく一方で、税理士を必要としない人々の税に関する知識は更新されていない…と感じ、より多くの人が正しい税知識を得て、よりよい生活をしてもらえたらいいなぁと思って開設したサイトです。専門用語には注釈をつけたり、いつも払っているだけの税金のその先も知ってもらえたら嬉しいです。

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