先日、子どものマイナンバーカード更新のために役所へ行きました。
はがきに書いてあった通り、古いマイナンバーカードと交換のためのはがきを持って。
予約した時間に受け取り場所に行ったら、
本人不在の場合は「古いマイナカードに加えて補助書類を1点持ってきてください」との説明です。
何を持っていけばよいのか尋ねると、健康保険証や住民票でもいいし、
なぜか「診察券で大丈夫ですよ」と言われました。

正直、耳を疑いました。
診察券?はい???

実母である私に「本物かどうかわからない」とかいうのですけど、
いや、マイナンバーカードと、受け取りに必要なはがきがあって、それで本物かどうか確認できないのに
診察券があれば本物って確信できるのかよーーー!!!

結局、何も持ってきていないので、一度帰宅。

せっかくだから一番証明書として弱すぎるもので試してみようと思い、
子どもがまだ赤ちゃんだった頃に一度だけ受診した、既に廃業済みのクリニックのものを見せると、名前だけ確認して
「はい、OKでーす」

存在しない医療機関の診察券で、本人確認になるとは到底思えないのに、なぜかできた。

マイナンバーカードでも、自宅に届いたはがきでも、本人確認は足りないのに
存在しない医療機関の診察券で本人確認できる。

その瞬間、心の中で思いました。
これは一体、何の茶番なのでしょうか。

本人確認制度は、本来であれば私たちの安全を守るためのものです。
なりすましや不正契約を防ぎ、誰もが安心して行政サービスを受けられるようにするために存在しているはずです。

ところが現実には、
廃業したクリニックの診察券を提示するだけで問題なく通ってしまう。
その診察券には本人確認の能力はほぼゼロですし、
窓口の職員の方も、そのことを理解しているように見えました。
それでも「補助書類1点」というマニュアルがある以上、
それを形式的に確認する以外の選択肢はないのでしょう。

つまりこれは、
本人確認のための仕組みではなく、
“確認したという形式を残すための儀式”に過ぎないのです。

この儀式によって迷惑を被るのは、いつも市民です。
マイナンバーカードを受け取るために、数日前に電話予約をし、職場には有給を取り、はがきに書いてある通りのものを持って行き、代理申請書類も書いて行ったにもかからずはがきには書かれてない「補助書類1枚」のためにマイナンバーカードを受け取れなかった一市民の私ですよ!

役所を往復したり、家に取りに戻ったり、場合によっては時間をつくるために仕事を調整したりすることになります。
しかし、その負担は制度全体の安全性を高めるために役立っているわけではありません。
実際には、犯罪者への抑止力にもならず、ただ一般の人にだけ余計な不便を強いているにすぎないのです。

さらに、2点確認のせいで不便は加速する

さらに今は、マイナンバーカードに保険証も免許証も統合され、運転免許証も含め「1枚で完結する」方向に制度が動いています。
仮に、マイナンバーカードに運転免許証も入れてしまった場合、本人確認で2点確認をされる場合
マイナンバーカードのほかに、住民票やパスポートなどを準備する必要が出てきます。
そうなると、マイナンバーカードを持ってコンビニに行って、コンビニで住民票を300円くらい出費して出さないといけないってことになるんですよ。

にもかかわらず、本人確認だけは昭和のルールが残り続け、
「1枚に統合したのに、確認は2点必要です」と言い続ける。

これは制度の不整合ではなく、はっきり言ってしまえば怠慢です。

合理性のないルールを惰性で維持し、
「確認しています」という姿勢だけを守る。
その一方で、確認される市民だけが負担を負います。

今回の経験で、本人確認制度の形骸化がここまで進んでいるのかと驚くとともに、
これを見直さない限り、同じような不条理が何度でも繰り返されるだろうと感じました。

技術は進歩しています。
ICチップ照合、顔認証、オンライン本人確認(eKYC)など、
診察券とは比較にならないほど高精度の仕組みが既に利用可能です。

それなのに、廃業クリニックの診察券が“本人確認書類”として通ってしまう不条理。

もう、この無意味な儀式は見直すべき時期に来ていると思います。
市民の負担を減らし、実質的に安全性の高い仕組みへと移行していくためにも、
形式だけの本人確認は、そろそろ終わりにしてほしいものです。

投稿者プロフィール

YFPクレアグループ
YFPクレアグループ
税理士法人、行政書士法人、社労士事務所などのグループです。
税制は複雑化していく一方で、税理士を必要としない人々の税に関する知識は更新されていない…と感じ、より多くの人が正しい税知識を得て、よりよい生活をしてもらえたらいいなぁと思って開設したサイトです。専門用語には注釈をつけたり、いつも払っているだけの税金のその先も知ってもらえたら嬉しいです。

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