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相続税というと、昔は「お金持ちにだけ関係する税金」というイメージが強かったかもしれません。
しかし、今はもう、そう言い切れない状況になっています。

国税庁によれば、相続税の課税割合は、2014年分には4.4%でしたが、2015年分に8.0%へ大きく上昇し、2024年分には10.4%に達しました。相続税がかかる被相続人の割合は、ついに10人に1人超になったのです。

1割という数字は、決して「ごく一部」と言える水準ではありません。
総務省の住宅・土地統計調査では、空き家率は13.8%。厚生労働省の国民健康・栄養調査では、20歳以上の喫煙率は14.8%です。これらと比べても、相続税の課税対象が10.4%というのは、すでにかなり身近な規模だとわかります。
皆さんの周りは10人に1人は富裕層ですか?10人に1人は見るからにお金持ちって感じですか?
そうでもないですよね?今、相続税がかかっている家庭は「ごく一般的」になりつつあります。

では、なぜここまで相続税が広がったのでしょうか。

相続税を課税される人が増えている理由は?

最大の転機は、2015年の基礎控除引き下げ

もっとも大きな要因は、2015年の相続税改正です。

それまで相続税の基礎控除は、
5,000万円+1,000万円×法定相続人の数
でした。

ところが2015年以後は、
3,000万円+600万円×法定相続人の数
へと引き下げられました。国税庁もこの基礎控除の仕組みを明示しています。

たとえば、配偶者と子2人なら、改正前の基礎控除は8,000万円でしたが、改正後は4,800万円です。
同じ家族構成でも、課税ラインが3,200万円も下がったことになります。

これでは、かつてなら「相続税なんて関係ない」と思われていた家庭まで、課税対象に入りやすくなるのは当然です。

少子化で「控除を受けられる人数」も減少→基礎控除がますます下がる

しかも、今は少子化・未婚化の影響もあります。

相続税の基礎控除は、法定相続人の数に応じて増えます。
つまり、相続人が少ないほど、基礎控除は小さくなるという仕組みです。

生命保険金の非課税枠も同じです。
相続税では、一定の生命保険金について 500万円×法定相続人の数 の非課税枠があります。相続人が3人なら1,500万円、2人なら1,000万円、1人なら500万円です。相続人が減れば、この非課税枠も小さくなります。国税庁もこの取扱いを案内しています。

つまり今は、

  • 基礎控除そのものが2015年に大幅に縮小された
  • 少子化や未婚化で、法定相続人の数も減りやすい
  • その結果、基礎控除も生命保険の非課税枠も小さくなりやすい

という、相続税がかかりやすくなる方向の変化が重なっているのです。

地価上昇で「家があるだけ」で課税に近づく

さらに見逃せないのが、地価の上昇です。

国土交通省の2025年地価公示では、全国の地価は全用途平均で4年連続の上昇、住宅地・商業地とも上昇幅が拡大したと公表されています。三大都市圏では上昇傾向がより強く、東京圏でも上昇幅の拡大が続いています。

つまり、同じ土地でも、以前より評価が高くなりやすい。
とくに都市部では、「親が昔買った普通の自宅」が、今では相続税の課税ラインに近づいているケースが珍しくありません。

マンション価格の上昇も無関係ではありません。
近年は区分所有マンション、とくに都市部のマンション価格が高騰しており、相続財産全体を押し上げやすい状況です。さらに、マンション評価については2024年1月以後、実勢価格との乖離を一定程度補正する見直しも行われており、従来より評価が上がるケースも出ています。

金融資産も増え、相続税の対象が広がっている

土地だけではありません。
家計金融資産も大きく積み上がっています。
日本は貯金をしていても全然増えない時代が長かったので、その間、投資をしていた人も増えました。
最近では、NISAをしている人も多いですが、非課税なのは所得税だけ。亡くなったら相続税の課税対象になります。

日本銀行は、家計の金融資産残高が近年高水準で推移していることを示しています。預貯金、有価証券、投資信託などの増加は、そのまま相続財産額を押し上げやすい要因です。現金や預金は、土地のように評価の圧縮が働きにくいため、そのまま課税対象になりやすい財産でもあります。

こうして見ると、今の相続税は、昔のような「ごく一部の大資産家だけの税」ではありません。
基礎控除の引き下げ、相続人の減少、地価上昇、金融資産の増加。これらが重なり、普通の家庭にも届く税金へと変わってきているのです。

では、その結果、何が起きるのか

【まとめ】相続税を払う人がでおこっていること10%を超えた背景

  • 基礎控除が減額:5,000万円+1,000万円×法定相続人の数3,000万円+600万円×法定相続人の数
  • 法定相続人数の減少
  • 地価上昇
  • 金融資産の所有者も増加

相続税は、現金や換金しやすい資産が十分にあればまだ対応できます。
しかし、財産の多くが土地や自宅、賃貸不動産だった場合、相続税を納めるために売却を検討せざるを得ないことがあります。

2014年までは富裕層か超富裕層以上(全体の3%)が主に相続税の対象になっていましたが、今は準富裕層(全体の10.2%)から相続税の対象になる人が増え、各段に相続税を課税される「ちょっと資産持ち程度のほぼ庶民」が増えました。

東京近郊に土地が一つでもあれば準富裕層に入る可能性があり、相続税の対象となる被相続人が増えました。

野村総合研究所 https://www.nri.com/jp/news/newsrelease/20250213_1.html
出所:国税庁「国税庁統計年報書」、総務省「全国消費実態調査」、厚生労働省「人口動態調査」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計」、東証「TOPIX」およびNRI「生活者1万人アンケート調査(金融編)」、「富裕層アンケート調査」などからNRI推計。

相続争いが増えた

弊社は相続専門とする部隊がいるほど、相続に力を入れている税理士事務所です。
ですから、相続のご相談は受けますが、多いのは被相続人(お亡くなりになった方)の財産が「東京や埼玉、神奈川などの利便性の高い土地にある実家1つと数百万円の現金のみ」という状況です。そして相続人(遺産を受け取る方)は複数いて、実家に住みたい人や、売ってお金が欲しい人など意見が割れるケースが非常に多いです。

実は相続争いというのは、大富豪の間で起こっているのではなく、相続争いの75%は実家一つと現金ちょっとしかない極めて庶民的な家族で起こっていることです。残した家族を平等にしたい…という気持ちはあっても遺産がそう簡単に割り切れなければ、遺族の気持ちも割り切れない事情を抱えていることも多いです。

前も書きましたが、弊社スタッフが知る相続争いの最少額は「遺産50万円」です。
遺産としては小さい金額かもしれませんが、進学を控えた子供がいる家庭や、この物価高騰している状況では50万円は決して少ない金額ではないですか?

2015年以前の相続争いとは全く質が異なり…「懐事情が厳しい家族同士の争い」が増えた…というのが正直なところです。

外国人の土地取得の問題

ここで、近年よく議論になるのが、外国人による土地・マンション取得です。

この点は、冷静に整理する必要があります。
まず、日本政府自身が、外国人による土地等の取得を含む国土の管理・利用について、政府横断で検討を進める方針を打ち出しています。2025年の骨太方針でも、外国人による土地等の取得を含めた透明性向上やデータベース整備の検討が示されました。

また、国土交通省は2025年に、新築マンション取引の調査結果を公表し、国外居住者による取得割合を一部把握しています。ただし同時に、現状の登記情報には国籍情報が含まれておらず、国内居住の外国人による取得実態までは把握できていないとも明言しています。つまり、「どの程度まで外国人取得が広がっているか」は、まだ十分に見える化されていません。

きちんと整備した上で、どうするべきか、議論を深めてほしいと切に願います。

なお、自衛隊基地や米軍基地などの重要拠点の周辺は、一般の土地よりもすでに特別な制度の対象になっています。

2022年9月に全面施行された重要土地等調査法により、防衛関係施設、米軍施設、海上保安庁施設、原子力関係施設、国境離島などの周辺が、「注視区域」または「特別注視区域」として指定される仕組みになりました。内閣府は国境離島や防衛関係施設周辺の土地の所有・利用をめぐる安全保障上の懸念を挙げていますが、「基地の周辺だから外国人は買えない」という制度ではありません
この法律は、まず土地や建物の利用状況を調査し、重要施設の機能を阻害するような利用があれば、中止の勧告・命令ができる仕組みです。つまり、現在の日本法は一律の所有禁止ではなく、調査・把握・利用規制型です。内閣府の2024年度分の集計では、重要施設周辺(自衛隊基地など)など583区域で確認された土地・建物の取得総数は113,827筆個で、そのうち外国人・外国系法人による取得は3,498筆個、全体の3.1%でした。また、2024年度中に、重要土地等調査法9条に基づく勧告・命令は実施されていません。

日本全体ではどのぐらいの土地が外国人に買われているかはわかりませんが、既に重要土地付近では3%は外国人に買われているという事実。
ちょっと怖いな…本当に大丈夫なのか?特に有事の時ほんとうに大丈夫なのか?…と、不安を感じる人もいらっしゃるのではないでしょうか?
どのような調査をし、何を把握しているんだろう…安全保障も関わる重要事項でしょうから秘密にするのは当然だし、私が知る必要性はないとは思いつつ、きっとマンガの中でしか見ないようなすっごいレーダーとかを使って怪しい電波をキャッチしてたり…みたいなことをして、調査してくれてると思いたい…間違ってもアンケートみたいなので終わらせていませんように…

「富の固定化を防ぐ」という建前だけでよいのか

相続税を見直そうという話をすると、必ず「富の固定化を防ぐために必要だ」という意見が出ます。

たしかに、相続税にはそうした理念があります。それ自体は理解できます。

しかし、今の日本で本当に起きているのは何でしょうか。

相続税の課税対象はすでに10.4%に達しています。
基礎控除は大きく下がり、相続人は減り、地価は上がり、金融資産も増えています。都市部では、昔から住み継いできた土地をそのまま持ち続けることが難しくなる場面もあります。自分は変らない生活を送っていても、税制や社会の変化で、勝手に「準富裕層扱い」になり、相続の対象となる。
1億総マス層化させていませんか?

そして、外国人はというと、相続税がないので富の固定化をできてしまいます。

富の固定化を問題にする一方で、
日本の土地や住まいが、日本人にとって持ち続けにくいものになっていないか。
この問いは、もっと真剣に議論されるべきだと思います。衣食住の問題なので、生命にも関わる重要な問題です。

相続税は、いまこそ「在り方」そのものを見直すべき

以前は、外国人が日本の土地を買い漁る…という状況を考えていなかったと思います。

私は、相続税をすべてなくせと言いたいわけではありません。状況が変わっている今、過去の延長線上に理想の日本はあるのか?という疑問があるのです。また、本当に巨額の資産移転に対して一定の負担を求めるという考え方まで、全面否定するつもりもありません。

ただ、少なくとも今の相続税は、もはや単純に「富裕層への課税」とは言えません。
制度改正と社会変化の積み重ねによって、日本で普通に暮らし、家を持ち、土地を引き継ごうとする人たちにまで、じわじわと重くのしかかる税金になっています。

このまま放置すれば、
「住み継ぐ」「守る」「残す」という発想より、
「売って納税するしかない」という判断が増えていくでしょう。

それでよいのか。
日本の土地政策、住まい政策、家族政策まで含めて、今の相続税の在り方を考え直す時期に来ているのではないでしょうか。

投稿者プロフィール

YFPクレアグループ
YFPクレアグループ
税理士法人、行政書士法人、社労士事務所などのグループです。
税制は複雑化していく一方で、税理士を必要としない人々の税に関する知識は更新されていない…と感じ、より多くの人が正しい税知識を得て、よりよい生活をしてもらえたらいいなぁと思って開設したサイトです。専門用語には注釈をつけたり、いつも払っているだけの税金のその先も知ってもらえたら嬉しいです。

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