
2025年12月。
自民党の税制調査会で、
8年度改正以降に結論を得るとされた、高校生世代の扶養控除の見直しも議論した。
「え!?その話、まだ生きてたの!?」
そんな話を耳にして、高市政権になってその話は立ち消えると思いきやそんなことはありませんでした。
高校生といえば、食べ盛り・伸び盛り・そして進学を控えた最もお金のかかる時期です。
その家庭に対して、なんと「増税」にあたる政策が検討されている。
これは、感情論ではなく、制度として見ても明らかにおかしいと断言できます。
今回はなぜ高校生の扶養控除を減らすことに反対なのかを、冷静に整理してお伝えします。
高校生は「子育てで最もお金がかかり始めるタイミング」
「子どもが大きくなったらお金はかからない」
もしそんなイメージをお持ちなら、それは現実とは真逆です。
「でも、高校無償化でしょ?お金なんてかからないでしょ!」
実際の高校生世帯では、こんな支出が一気に膨らみます。
- 食費(大人と同等、運動部ならそれ以上)
- 通学定期代・交通費
- スマホ・通信費
- 被服費(成長が止まらない)
- 塾・予備校などの学校外教育費
文部科学省の調査でも、
高校生1人あたりの年間教育関連支出は、公立でも約50万円超、私立なら100万円超が平均です。
つまり高校生は、
「子ども手当などの支援は薄くなり、
それでいて支出だけが一気に増えるゾーン」
この“家計が最も苦しくなり始める時期”を狙って扶養控除を削る。
これは、生活実態を無視した制度改正と言わざるを得ません。
「高校無償化」で無償になるのは、ほぼ“授業料だけ”
いわゆる「高校無償化」とは、正式には 高等学校等就学支援金制度 のことです。
この制度で対象になるのは、基本的に 授業料相当額のみ です。
しかし、実際の高校生活には次のような費用がかかります。
- 入学金
- 教科書・教材費
- 体操服・制服・靴
- 修学旅行・研修費
- PTA 会費
- 通学費(定期代)
- タブレット・PC代
- 部活動費・遠征費
- 塾・予備校費用
これらは 無償化の対象外 です。
つまり実態としては、
高校無償化の実態
✅ 授業料だけが軽減されただけ
❌ 高校生活そのものが無償になったわけではない
というのが正確な理解です。
しかも、高校無償化されたはずなのに、学習費の総額は下がるどころが上がってる!
文部科学省「令和5年度子供の学習費調査の結果を公表します」によると、10年間の学習費の推移は下記の通りです。

引用元:令和5年度子供の学習費調査の結果を公表します 文部科学省 令和6年12月25日
この期間中に「幼保無償化」と「高校無償化」が行われています。
平成22年(2010年) 公立高校の授業料無償化スタート。(所得制限なし)
令和元年(2019年) 幼保無償化がスタート
令和2年(2021年) 世帯所得590万未満で私立高校授業料、910万円未満で公立高校の「実質無償化」と所得制限ができる。
令和7年(2025年) 所得制限撤廃
という流れです。
なので、平成30年度から令和3年度にかけて、公立幼稚園、私立幼稚園の学費が下がっているのは理解できます。
が!!令和2年、私立高校も含め、74%の高校生が無償化の対象になり、26%の子が高校無償化の恩恵を受けられず、増税だけをされたのにもかかわらず、平成30年と令和2年では約20万円も学習費が増えているんですよ!!
無償化された結果、逆に学習費が増えている!という現実をよぉぉぉ~~~く見てくださいね。
下がるどころか、横ばいでもなく、上がっているんですよ!!
それでいて、2021年のタイミングで「高校生はいっぱい食べるし、勉強にもお金がかかる」という理由でついてた特定扶養控除の25万円の上乗せ分が消えて38万円に減っているんです!
高校無償化されて学習費の負担が減るどころか、公立・私立ともに、負担が増え、さらに増税されている現実があるんです!
俺たちの時代は無償化がなくてもできた派の皆様へ
この手の話のとき、必ず「俺たちが子育てしているときはそんなのなくても育てられた」「今の親は情けない、無責任」という声が上がります。
正直、国民の負担額が異なりますので、昔と比べるのは非常にナンセンス。
ナンセンスではあるのですが、ここはしっかり見ておきましょう。
① 消費税:0% → 10%(これはあまりにも決定的)
昭和50年当時、日本に 消費税は存在しませんでした。
| 年代 | 消費税率 |
|---|---|
| 昭和50年(1975年) | 0% |
| 現在(2025年) | 10% |
これはどういう意味か。
例えば、年300万円生活費を使えば、
- 昭和50年:消費税 0円
- 現在:消費税 約30万円
子育て以前に、生活するだけで毎年30万円が自動的に消える社会になっています。
この一点だけでも、
「昔は支援がなかった」のではなく、
「そもそも今ほど国が毎年巻き上げていなかった」
ということが分かります。
② 社会保険料:実質“数倍”に爆増
昭和50年頃の本人負担は、ざっくり
昭和50年
- 健康保険:約4~5%
- 厚生年金:約6~7%
→ 合計:約10~12%前後
現在
- 健康保険:約10%
- 厚生年金:18.3%(本人負担9.15%)
→ 合計:約19~20%
つまり、
社会保険だけで“2倍”抜かれる社会になっています。
仮に年収500万円なら、
- 昭和:約50万円
- 現在:約100万円
この 差額50万円 が、家計から自動で消えているわけです。
さらに、これだけ負担しているのにもかかわらず、年金は足りず、今の子育て世帯は老後に2000万円(現在は3,400万円)を自力でためておく必要があります。詳しくは【2025年度版】老後2000万円問題は今ならいくら必要?をご覧ください。
その結果、国民負担率が全く異なる

国民負担率は、個人所得課税、法人所得課税、消費課税、資産課税、社会保障、消費課税からできています。
ここで注目すべきは法人所得課税。1985年~1990年のバブル時に法人所得課税は山場を迎えるものの、昭和50年から今に至るまで、負担率自体は1~2%しか上がっていません。それに対し、国民負担率は25%→46.2%と20%以上アップ。
それほど一国民の負担は増えているということです。
法人税率の推移
一国民の社会保障などの負担が増える一方、法人税率は下がる一方です。
- 昭和56年頃: 約42%
- 平成初期: 37.5%
- 平成11年: 30%
- 平成27年度: 25.5%から23.9%に引き下げ
- 平成28年度: 23.4%に引き下げ
- 平成30年度以降: 23.2%に定着
実際にはこれに法人住民税や法人事業税などの地方税も加算されるため、実効税率はもっと高いのですが、消費税や社会保障などの負担が増える個人に比べると…という気持ちになります。
もちろん、法人あっての給与だったりもするので、一概に「法人は恵まれてる!優遇だ!」というのは違うとは思うのですが、国民負担率の右肩上がりに対して、法人は微増…という現実があります。つまり、この重い負担はほぼ、個人と家計によって負担をしているということです。また、法人課税を軽くしても、内部留保につながっただけで、多くの企業では賃上げには回っていません。
で?これのどの辺が税の公平性?異次元の子育て支援?
純粋な疑問です。
こんな現実を見て「わ~♪安心して子育てできるわ!もっと子供生もう♪」ってなるか、って話です。
これだけ負担が増えているのにもかかわらず、減税どころか増税の話が立消えないのは「あと一人」を考えている夫婦にとっては不安でしかないと思います。
ひどい話だと思います。
また、高市早苗内閣総理大臣は指示を出していないし、決定した事実もない…と自身のXで伝えています。
ですが、今まで、高校生や0~15歳の扶養控除を減らしてきた事実はしっかりあり、上記に述べた通り、高校生の扶養控除を減らした上、学費もアップした過去があるので、目を見開き、脳をハッキリさせた上で与党の税制調査会を見続ける必要があるかと思います。
投稿者プロフィール

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税理士法人、行政書士法人、社労士事務所などのグループです。
税制は複雑化していく一方で、税理士を必要としない人々の税に関する知識は更新されていない…と感じ、より多くの人が正しい税知識を得て、よりよい生活をしてもらえたらいいなぁと思って開設したサイトです。専門用語には注釈をつけたり、いつも払っているだけの税金のその先も知ってもらえたら嬉しいです。
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