国民年金「第3号被保険者」の歴史:制度はどう生まれ、どう変わってきたか
国民年金の「第3号被保険者」は、ざっくり言うと会社員・公務員など(第2号被保険者)に扶養される配偶者のための仕組みです。要件としては、20歳以上60歳未満で、日本国内に住所があり、第2号被保険者の収入で生計を維持していることなどが前提になります(実務上は“年収130万円未満”など、健康保険の被扶養者認定の考え方を踏まえて運用)。
ここでは「第3号がいつ・なぜできたのか」「その後どんな改正や論点が積み重なってきたのか」を、歴史として整理します。
1. 第3号ができる前:配偶者の加入は“任意”だった(〜1986年3月)
いまの感覚だと意外ですが、1986年(昭和61年)3月まで、いわゆる「サラリーマンに扶養されている配偶者」の国民年金加入は任意でした。加入するなら自分で市区町村に届け出て、保険料を納める必要があった、という位置づけです。
この任意加入制度には、当時から課題が指摘されていました。たとえば、加入しなかった場合、高齢になって離婚したとき等に年金の保障が薄くなること、強制保険としては加入・脱退が自由な仕組みが制度運営上不安定になり得ることなどです。
2. 1986年4月:第3号被保険者がスタート(基礎年金導入の流れの中で)
こうした問題意識の中で、1986年4月に第3号被保険者の適用が開始されます。以後、「サラリーマンに扶養される配偶者(20歳以上60歳未満)」は、要件を満たす限り第3号として扱われる仕組みになりました。
制度導入の背景としては、当時の審議の中で、基礎年金の導入を通じて「夫婦世帯と単身世帯の給付水準の分化」や、“婦人の年金権の確立”といった方向性が語られていたことが読み取れます。
重要ポイント!
第3号は「専業主婦(主夫)優遇」という一言で片付く話というより、
“任意加入のままだと保障が薄い層が出る”という課題を、基礎年金の枠組みの中でどう扱うか――という制度設計の一部として登場した、ということです。
3. 届出の仕組みと「届出もれ」問題:2002年4月の大きな変更
第3号はスタート当初、本人が市区町村に届出する必要がありました。
しかし実務上は「届出もれ」が発生しやすく、それが後々まで問題になります。
そこで、2002年4月からは、配偶者(第2号被保険者)の勤務先を経由して届出をする形に変更されます(会社等を通すことで手続きを寄せる狙い)。
4. 1995年・2005年:届出の“救済”が制度化されていく
第3号の運用で大きいのが「届出が遅れた/漏れたらどうなるか」です。
日本年金機構の整理資料では、次のような経過が示されています。
- 1995年:第3号の特例届出開始
- 2005年:第3号届出の“2年超の遡及”に関する取扱いが整備(一定の期間について、届出があれば納付済期間として扱う等の整理)
このあたりは、「制度として第3号を置く以上、届出もれで年金権が大きく傷つく人をどう救うか」が、継続的に課題になってきたことを示しています。
5. 2007年〜2008年:離婚時の年金分割と「3号分割」
歴史の中でもう一つ大きな転機が、離婚時の年金分割です。
日本年金機構の制度案内では、離婚時の年金分割として合意分割などの枠組みが整理され、運用されています。
(一般に、2008年4月施行の「3号分割」は“合意なしで2分の1”が基本となる仕組みとして知られ、専業期間の取り扱いと結びついて理解されることが多い部分です。)
6. 2010年代:いわゆる「3号不整合」問題と、2013年改正・2015年の周知
第3号の歴史を語る上で避けて通れないのが、いわゆる「3号不整合」(本来は第1号へ切替が必要なのに、第3号のまま記録が残っていた等)です。
日本年金機構の案内では、2013年(平成25年)7月の法改正を踏まえた扱いとして、一定の届出により「年金額には反映されないが受給資格期間に算入できる期間(特定期間)にできる」などの措置が説明されています。
7. まとめ:第3号の歴史は「保障の穴を埋める」→「手続き・公平・働き方との調整」の連続
第3号被保険者の歴史を一言でまとめると、だいたいこうです。
- もともと任意加入だった配偶者の保障に“穴”があった
- 1986年に第3号を設けて制度化した
- その後は「届出もれ」「離婚時の取り扱い」「記録不整合」など、現実のケースに合わせて調整が続いた
いま第3号をめぐっては「公平性」や「働き方(扶養の壁)」の議論が出やすいですが、背景にはずっと一貫して、“年金の保障をどう切らさないか/制度をどう運用可能にするか”の課題が横たわっています。
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