豪雨による水害で、家や事務所に泥水が入り込んでしまった…。
そんなとき、まず優先すべきは生活の安全確保と片付けですが、同時に「確定申告に向けた準備」も忘れずに進めておきましょう。

被害の証拠を残し、必要な書類を集めておくことで、雑損控除や災害減免法による税の軽減が受けられる可能性があります。


1.まずは「記録」を残すことが第一歩

片付けに取りかかる前に、写真と動画で被害を記録しておきましょう。
撮影のポイントは「全景・中景・接写」の3種類です。

  • 全景:部屋や外観を入口から撮影し、水位の高さが分かるようにメジャーや新聞紙を写し込む。
  • 中景:家具や家電の置かれていた一角を撮影。泥や水跡と一緒に対象物が映るように。
  • 接写:家電の型番やシリアルナンバー、家具の脚の錆や布のシミなど、被害の具体的な部分をアップで。

動画も1本撮っておくとより確実です。「被災した日付」「場所」「水位」を口頭で説明しながら撮影しておくと、証拠力が強まります。


2.家電・家具を撮影するコツ

家具家電の破損も損失として大きいです。写真を撮って証拠を残しましょう。「全景・中景・接写」の3パターンを忘れずに!

  • 大型家電(冷蔵庫・洗濯機など)
     設置場所全体とともに、銘板(メーカー・型番・製造年)を接写。底面の錆や泥も撮影しておきましょう。
  • 小型家電(炊飯器・掃除機など)
     棚の水跡と一緒に写し、通気口やフィルターに泥が詰まっている様子を接写。
  • 家具(ソファ・タンスなど)
     脚部の高さと水跡、布製ならシミやカビの進行状況を数日おきに記録しておくと効果的です。

3.ブランド品や時計はどう扱う?

「ブランドバッグや高級時計が浸水してしまった…」というケースもあるでしょう。
ここで注意したいのが、雑損控除の対象外となる資産があるという点です。

宝石や貴金属、骨董品、美術品などは生活必需品とはみなされず、対象になりません。
一方で、通勤や普段使いで使用していたバッグや時計であれば、日常生活に必要な資産として対象になり得る場合があります。

この場合は、

  • 刻印やシリアルナンバーを接写
  • 保証書や購入時のレシート、付属の箱や袋を一緒に撮影
  • カビや色落ち、金具の腐食などの状況をアップで
  • 修理工房やブランド直営店の「修理不能」の診断書

をそろえておくと、説得力が格段に増します。


4.事務所や事業用資産の被害は帳簿と結びつける

事務所や店舗、事業用設備の被害は、固定資産台帳や棚卸表と写真をセットにするのが重要です。

  • 機械や什器は資産番号ラベルや型番を一緒に撮影
  • 在庫は棚全体の全景 → 商品中景 → バーコードや品番の接写
  • 廃棄する際は搬出前後の写真、廃棄伝票や業者の引取証明を確保

この流れを押さえておけば、必要経費や棚卸減耗損として会計処理がスムーズになります。


5.必要書類も忘れずに

  • 罹災証明書(居住用の被害)
  • 被災証明書(事業用施設の被害)
  • 修理や撤去、クリーニングの領収書
  • 仮住まいの賃貸契約や家賃の領収書
  • 自治体や保険会社からの支援金・保険金の通知

これらは確定申告で必ず求められる資料です。

罹災証明書、被災証明書は市区町村役場で受け取れます。
お受け取りはお早めに!


6.申告に向けて

確定申告では、

  • 雑損控除として申告するのか
  • 災害減免法による軽減・免除を受けるのか
  • 事業経費として処理すべきか

を検討する必要があります。
判断はケースによって分かれるため、税理士や自治体窓口への相談を早めに行うことをおすすめします。


まとめ

災害後は「とにかく片付けたい」と思うものですが、確定申告を見据えると、

  1. 記録を残す
  2. 証明書を取得する
  3. 領収書を集める

この3ステップを意識することが何より大切です。
後から証拠を補うのは難しいため、一刻も早く片付けたいお気持ちは察するに余り有るのですが、今後のお金のことを考えると片付けより先に記録を心がけてください。

災害は避けられませんが、正しい手続きを踏めば税金面での支援は受けられます。
少しでも生活再建の助けになるよう、今の段階から準備を進めておきましょう。

投稿者プロフィール

YFPクレアグループ
YFPクレアグループ
税理士法人、行政書士法人、社労士事務所などのグループです。
税制は複雑化していく一方で、税理士を必要としない人々の税に関する知識は更新されていない…と感じ、より多くの人が正しい税知識を得て、よりよい生活をしてもらえたらいいなぁと思って開設したサイトです。専門用語には注釈をつけたり、いつも払っているだけの税金のその先も知ってもらえたら嬉しいです。

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