【相談内容】
私は現在、ある会社で正社員として働いています。
業務の中でアルバイトの勤怠や給与の処理に関わることがあり、先日、どうしても気になることがありました。
それは、アルバイトとして登録されている人物の中に、実際には一度も出勤していない人が何人かいたことです。
名前だけはシステムにあり、給与も支払われているようなのですが、出勤記録も作業報告もまったく見当たりません。
不審に思って調べてみると、その名前の中に店長のご家族と一致する人物が含まれているようなのです。
店長本人がその件に触れることはなく、周囲も暗黙の了解のような雰囲気があり、誰も何も言いません。
私は正直、これが会社のお金を使った不正ではないか?と疑っています。
しかし、もし指摘すれば、私がにらまれたり、立場が悪くなるのではないかと不安です。
知らなかったふりをしてやり過ごすこともできるかもしれませんが、それでいいのかと、悩んでいます。どうするべきでしょうか?
【回答】
この相談は、いわゆる「架空人件費」による不正処理の疑いに関するものです。
会社の帳簿上は“アルバイトに給与を払った”という処理がされているにもかかわらず、実際には働いていない人物に対して給与が支払われているとすれば、次のような問題が発生します。
1. 税法上の不正処理(脱税)
会社が支払った給与は、本来「費用」として法人税計算の上で損金に算入されます。
損金に算入されると、税金が軽くなります。
しかし、本来実在していない労働に対して支払った給与(架空給与)は、損金として認められません。
それを知りながら損金計上していれば、法人税法上の「仮装・隠蔽」に該当し、重加算税や延滞税などが課される対象になります。
つまり、会社が損をする上、税務上の信頼を失います。
更に、店長の身内の名義を使って、店長が給与を受け取っていた場合(名義給与)、所得税法違反になります。
店長の家族名義で給与を支払い、実際には店長本人が受け取っていた場合には、実際の所得者と給与台帳上の受取人が異なることになります。
税金の計算では、口座の名義人よりも、実際に誰が受け取ったか…が重要になります。
その結果、源泉所得税、年末調整、給与支払報告書などが誤った内容となり、受取人本人の所得税申告にも影響する可能性があります。
2. 刑事上の問題(横領・背任)
架空の給与を使って会社のお金を店長本人や家族へ流していた場合には、会社に対する不正行為となる可能性があります。
具体的には、誰が会社のお金を管理していたか、誰が支払いを指示したか、誰が実際にお金を受け取ったかなどにより、業務上横領罪や背任罪などが問題になることがあります。
ただし、犯罪が成立するかどうかは個別の事実関係によって異なるため、従業員自身が「横領だ」と断定するのではなく、確認できた事実を会社の通報窓口などへ伝えることが大切です。
3. 労務・社会保険上の虚偽申告
仮に架空の従業員に対して雇用保険・社会保険の手続きがなされている場合、虚偽の届け出と見なされ、不正な保険料負担や助成金受給などに発展していればさらに深刻です。
【では、これからどうするべき?】
今回のケースは、会社にとって非常に重大なコンプライアンス上の問題を含んでいます。
相談者が指摘しているとおり、「これは不正なのではないか?」という感覚は極めて正しいものです。
◎この問題を放置するリスク
不正の疑いに気付いた従業員が、通報しなかったという理由だけで、直ちに法的責任を負うとは限りません。
ただし、架空の勤怠記録を作成する、虚偽の給与データを入力する、事実を隠すよう指示されて協力するなど、不正処理そのものに関与した場合には、本人にも責任が及ぶ可能性があります。
不正への関与を求められた場合は、指示の内容や日時を記録し、早めに社内の通報窓口や専門家へ相談しましょう。
◎通報・告発の方法と保護制度
労働者が勤務先の法令違反を通報した場合、一定の要件を満たせば、公益通報者保護法による保護を受けられることがあります。
通報先には、主に次の3つがあります。
- 会社の内部通報窓口や権限のある上司
- その法令違反について処分や勧告などの権限を持つ行政機関
- 報道機関や労働組合など、被害の拡大防止に必要な外部機関
どこへ通報するかによって、法律上の保護を受けるための条件が異なります。
また、公益通報は、会社を困らせる目的や不当な利益を得る目的ではなく、法令違反を是正する目的で行う必要があります。
通報先が分からない場合は、消費者庁の公益通報者保護制度相談ダイヤルや、弁護士などへ相談するとよいでしょう。
公益通報者保護法は2026年12月に改正
公益通報者保護法の改正法が、2026年12月1日から施行されます。
改正後は、公益通報を理由として解雇や懲戒処分などの不利益な取扱いをした事業者への対応が強化されるほか、通報者を特定する行為を防止するための措置なども強化されます。
◎今すぐ行動すべきこと
- 事実関係を記録する際は、自分が通常の業務で確認できた範囲にとどめておく(ご自身のコンプライアンスも守りましょう!)
- 直接上司に告げるのではなく、内部通報制度があればまずそちらへ
- 告げるときは、事実だけを伝え、推測や憶測は一切入れない
- 外部の弁護士に相談し、第三者の目で状況を判断してもらう
【まとめ】
このような問題に直面したとき、「見て見ぬふり」をするのは一見安全に思えますが、長期的には自分の立場や会社そのものを危うくすることにもつながります。
不正に巻き込まれないためにも、まずは冷静に情報を整理し、自分を守りながら適切な相談窓口を活用することが重要です。
そして、冷静に対応しましょう。このページにたどり着いたように気になったことを色々と調べてみましょう。
投稿者プロフィール

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税理士法人、行政書士法人、社労士事務所などのグループです。
税制は複雑化していく一方で、税理士を必要としない人々の税に関する知識は更新されていない…と感じ、より多くの人が正しい税知識を得て、よりよい生活をしてもらえたらいいなぁと思って開設したサイトです。専門用語には注釈をつけたり、いつも払っているだけの税金のその先も知ってもらえたら嬉しいです。
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