個人事業主になるために、登記や資本金は不要です。
手続き自体は比較的シンプル!ただし、退職後の社会保険や開業時の届出など、見落としやすい手続きも少なくありません。
実際、会社員から個人事業主になった方からは、次のような声も…

仕事を取ることばかり考えていて、退職後の健康保険や年金まで考えていなかった…

開業届を出せば終わりだと思っていた…
この記事では、会社員から個人事業主になるまでにやっておきたいことを、退職前→退職時→開業時→開業後の順番で解説します。
最後に、そのまま使えるチェックリストも用意していますので、「何か忘れていないかな?」という確認にもぜひ活用してください!
個人事業主になる準備は「開業届」からではない!
「個人事業主になる」と聞くと、まず開業届を思い浮かべる方も多いでしょう。しかし、会社員から独立するなら、その前に考えておきたいことがあります。
会社員から独立するなら考えておきたいこと
- 独立後、毎月いくら売上が必要か
- 当面の生活費は足りるか
- 退職後の健康保険や年金をどうするか
個人事業主は、手続きの面では比較的簡単に始められます。しかし、開業後に十分な売上が得られるとは限りません。
だからこそ、「個人事業主になれるか」ではなく、「独立後も無理なく続けられるか」を考えることが大切です!
STEP1|会社員のうちにやっておきたい独立準備
会社を辞める前に、まずは「独立後にどうやって仕事を続けるか」を具体的にしましょう。
事業の方向性や必要な売上が明確になり、見切り発車を防ぎやすくなります。
1.事業内容と売上目標を決める
まずは決めておくこと
- どんな商品・サービスを提供するのか
- 誰をお客様にするのか
- いくらで販売するのか
- 毎月どのくらい売上が必要なのか
会社員の給与30万円と、個人事業主の売上30万円は同じではありません。
売上は、経費を差し引く前の金額です。そこから事業経費を支払い、税金や社会保険料も負担します。
そのため、売上30万円がそのまま生活費になるわけではありません。
必要な売上を考えるときは、生活費だけでなく、事業経費や税金、社会保険料、貯蓄分なども考慮しましょう。「最低でも月○万円、できれば月○万円」と目安を決めるだけでも、独立のタイミングを判断しやすくなります。
2.開業資金と当面の生活資金を準備する
次に、開業までに必要なお金を確認します。
例えば…
- パソコンやスマートフォン
- 仕事用のソフト・ツール
- 仕入れ
- 店舗や事務所
- ホームページや名刺
- 広告費
さらに、独立直後から売上が安定するとは限りません。売上があっても、入金は翌月・翌々月というケースもあります。
事業資金だけでなく、当面の生活費も含めて準備しておくと安心です。
3.独立後の仕事・取引先を準備する
可能であれば、会社員のうちから「独立したら誰から仕事をもらうのか」を考えておきましょう。
例えば…
- 副業として小さく始める
- 見込み客を作る
- 作品例や実績を整理する
- サービス内容と料金を決める
- SNSやホームページを準備する
といった方法があります。
会社員のうちに準備を始めれば、退職後に収入が途切れるリスクを減らせます。副業から始める場合は、勤務先の就業規則の確認が大切です。
4.開業後に必要なもの・手続きを確認しておく
退職前の段階で、開業後に必要になるものも一度洗い出しておくとスムーズです。
例えば…
- 事業用の銀行口座・クレジットカード
- 自分で確定申告、もしくは税理士に依頼するかを検討
- 請求書や契約書のひな形
- 青色申告にするか白色申告にするか
- 業種によって必要な許認可
独立後は、収入実績が少ないことを理由に、カードやローンの審査が厳しくなる場合があります。
独立後に必要となる資金や決済手段は、退職前から検討しておきましょう。
STEP2|退職するときに必要な手続きを確認する
会社員を辞めると、これまで会社が手続きをしてくれていた健康保険や年金なども、自分で対応することになります。
健康保険や年金には手続きの期限があります。
1.退職後の健康保険を決める
主な選択肢は、次の3つ
- 国民健康保険に入る
- 今の健康保険を任意継続する
- 条件を満たせば家族の扶養に入る
国民健康保険と任意継続では、保険料の計算方法が異なります。
家族の扶養に入れるかどうかは、収入などの条件で決まるため、退職前に加入条件と保険料を比較しておきましょう。
任意継続は申請期限が原則、退職日の翌日から20日以内であるため、後回しにしないように注意!
2.厚生年金から国民年金へ切り替える
会社員のときは給与から自動で引かれていた年金も、退職後は自分で手続きします。
20歳以上60歳未満で配偶者の扶養などに入らない場合は、原則として14日以内に国民年金への切り替えが必要です。
3.退職後の住民税を確認する
「会社を辞めて収入が減るなら、住民税もすぐ安くなるよね」と思いがちですが、ここは注意です。
住民税は、前年の所得をもとに計算されます。
そのため、退職後に収入が減っても、会社員時代の所得に対する住民税を支払うことに…
現在の収入ではなく、前年の所得をもとにした金額を請求される点に注意しましょう。
4.退職時に必要な書類を受け取る
退職するときは、会社からもらう書類も忘れずに確認してください。
特に大切なのが、源泉徴収票です。
年の途中で会社員を辞めて個人事業主になった場合、その年の確定申告で会社員時代の給与も一緒に申告します。
「退職した会社の書類だからもう使わない」と思って捨てず、確定申告まで保管しておきましょう。
STEP3|個人事業主として開業するときに必要な手続きをする
必要な手続きは、開業する人の状況によって異なります。
1.開業届を提出する
まず確認したいのが、税務署へ提出する「個人事業の開業・廃業等届出書」、いわゆる開業届です。
2026年1月1日以後に開業した場合、開業届の提出期限は、事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限までとなっています。
以前は「開業から1か月以内」だったため、古いWeb記事などでは今もそのように書かれていることも…
とはいえ、「確定申告まで時間があるから大丈夫!」と、すべての手続きを後回しにするのは避けましょう。
次に説明する青色申告など、もっと早い期限がある手続きもあります。
2.青色申告をするなら申請を忘れずに
実は、青色申告を利用するには、あらかじめ「所得税の青色申告承認申請書」を提出しておく必要があります。
青色申告の主なメリットは、次のとおりです
- 一定の要件を満たすと、所得から最大65万円を差し引ける(※令和9年分確定申告から最大75万円になります。)
- 赤字を翌年以後に繰り越せる
- 一定の要件を満たす家族への給与を経費にできる
申請期限は原則としてその年の3月15日まで。1月16日以後に開業した場合は、開業日から2か月以内に提出します。
開業届より期限が早くなるため、両方の期限を一緒に確認しておきましょう!
3.インボイス登録が必要か考える
「個人事業主になったらインボイス登録もしないといけないの?」と不安になる方も…
結論からいうと、全員が必ず登録するものではありません。
法人の取引先は、仕入税額控除のためにインボイスを必要とする場合があります。
一方、一般消費者との取引が中心なら、登録を求められる場面は比較的少ないでしょう。
売上規模によっては、登録しなくても将来課税事業者になる可能性も…!
インボイス登録をすると、原則として消費税の申告・納税が必要になります。「よく分からないけれど、とりあえず登録しておこう」ではなく、自分の取引状況を見て判断することが大切です。
4.家族や従業員に給与を払うなら追加の手続きも
一人で始める場合と、人を雇う場合では必要な手続きも変わります。
青色事業専従者給与として経費にするには、事前に届出を行わなければなりません。従業員を雇えば、給与の源泉徴収や労働保険などの手続きも増えます。
「まず働いてもらって、手続きは後から」ではなく、人を雇う前に必要な届出を確認しておくのがおすすめです。
5.業種によって必要な許認可を確認する
開業届を提出したからといって、どんな事業でもすぐ営業できるわけではありません。
例えば…
- 飲食店
- 美容業
- 古物商
- 建設業
これらの業種では、事業内容に応じた許可や届出が必要です。許可を得ないまま店舗を準備すると、予定どおりに営業を始められない可能性があります。
自分が始める事業に許認可や資格が必要かどうかは、開業前の段階で確認しておきましょう。
STEP4|開業したら確定申告で困らない仕組みを作る
開業後は、確定申告に備えて日々の経理を始めます。
1.事業用とプライベートのお金を分ける
経理を楽にするため、事業用の銀行口座とクレジットカードを決め、仕事と生活のお金を分けておきましょう。
必ず屋号入りの事業用口座を作る必要はありませんが、普段使いの口座ですべて管理すると、

この支払い、仕事だっけ?プライベートだっけ?
と確認することになります。
2.確定申告を自分で行うか、税理士に依頼するかを検討
確定申告には、「会計ソフトを使って自分で行う方法」と「記帳から税理士へ依頼する方法」があります。
| 比較項目 | 自分で確定申告する | 税理士に依頼する |
| 費用 | 会計ソフト代など | 税理士への依頼費用 |
| 作業 | 記帳・確認・申告を自分で行う | 契約内容に応じて 記帳・確認・申告を依頼する |
| メリット | 費用を抑えやすい | 税務上の不安や作業負担を 減らしやすい |
| 向いている人 | 経理を学びながら取り組める人 | 経理に時間をかけたくない人 申告の正確性を重視する人 |
3.領収書・請求書を保存する
仕事で使った領収書やレシート、請求書なども保存しておきます。
- メールで届いた請求書
- PDFの領収書
- ネット通販の購入明細
など、最近は紙の書類だけでなく、電子データで受け取る書類も増えました。
紙で受け取った領収書は、紙のまま保存できます。一方、メールやPDFで受け取った書類は、原則として電子データでの保存が必要です。
紙と電子データでは保存方法が異なるため、それぞれのルールを決めておきましょう。
4.売上とは別に「税金用のお金」を残しておく
口座に入った売上は、すべて自由に使えるお金ではありません。そこから事業経費を支払い、利益に応じた税金を納める必要があります。
会社員のときは、給与から税金が天引きされていたため、独立後も同じ感覚でお金を使ってしまう方も!
納税分は、生活費とは別に確保しておくと安心です。
5.年の途中で退職したら給与も確定申告に含める
例えば、6月まで会社員、7月から個人事業主になった場合。確定申告するのは、7月以降の事業分だけではありません。
会社員時代に受け取った給与も、源泉徴収票をもとに確定申告へ反映します。開業した年は給与所得と事業所得の両方を申告するため、手続きが複雑になりがちです。
「これで合っているかな?」と不安になったら、申告期限ぎりぎりになる前に税務署や税理士へ相談しましょう!
保存版|会社員から個人事業主になるときのやることチェックリスト
最後に、ここまでの内容を時系列で確認しましょう。
会社を辞める前
- 事業内容・サービス内容を決める
- 毎月必要な売上を計算する
- 開業資金・生活資金を準備する
- 独立後の仕事・取引先を検討する
- 就業規則や必要な許認可を確認する
- 事業用口座・カードを検討する
会社を退職するとき
- 退職後の健康保険を決める
- 国民年金への切り替えを確認する
- 退職後の住民税を見込んでおく
- 源泉徴収票など必要書類を受け取る
個人事業主として開業するとき
- 開業届を提出する
- 青色申告をするか決める
- 青色申告承認申請書の期限を確認する
- インボイス登録が必要か判断する
- 家族や従業員がいる場合の届出を確認する
- 必要な許認可・資格を取得する
開業した後
- 事業用とプライベートのお金を分ける
- 会計ソフトや帳簿を準備する
- 売上・経費の記帳を始める
- 領収書・請求書を保存する
- 納税用のお金を残しておく
- 確定申告の準備をする
専門家へ依頼する場合
- 開業届や青色申告の申請を依頼できるか
- 記帳を自分で行うか、税理士へ依頼するか
- インボイス登録について相談できるか
- 納税予測が契約に含まれるか
- 許認可が必要な場合は、行政書士を紹介してもらえるか
税理士に依頼できる内容は、契約によって異なります。確定申告だけでなく、記帳や納税額の予測まで依頼したい場合は、対応範囲を確認しておきましょう。
会社員から独立すると、退職と開業の手続きが重なります。「何から始めればいい?」「青色申告やインボイスは必要?」と迷ったら、手続きを始める前にお気軽にご相談ください。
投稿者プロフィール

-
税理士法人、行政書士法人、社労士法人などの士業グループです。
税制は複雑化していく一方で、税理士を必要としない人々の税に関する知識は更新されていない…と感じ、より多くの人が正しい税知識を得て、よりよい生活をしてもらえたらいいなぁと思って開設したサイトです。いつも払っているだけの税金のその先も興味関心を持ち、知ってもらえたら嬉しいです。
税理士法人YFPクレア(東京税理士会 四谷支部 2029)
YFPクレア行政書士法人(埼玉県行政書士会所属 2402701)
YFPクレア社会保険労務士法人(埼玉県社会保険労務士会 浦和支部)
最新の投稿
副業と確定申告2026年9月2日会社員から個人事業主になるには?独立前後のやることチェックリスト
副業と確定申告2026年8月25日個人事業主と会社員の違いとは?働き方や収入を徹底比較
雑談2026年7月30日熊本を応援したい!返礼品なしの「災害支援ふるさと納税」
雑談2026年6月3日給付付き税額控除とは?メリットと懸念点を税理士がわかりやすく解説
免責事項
本コラムは、税金に関する一般的な情報提供を目的としており、個別具体的な状況に対する助言(税務申告・節税判断・手続きの代行等)を行うものではありません。
税制や運用は改正・変更されることがあり、本コラムの内容は執筆時点の情報に基づいています。可能な限り正確な情報を掲載するよう努めていますが、内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではありません。
本コラムの情報を用いて行う一切の行為およびその結果について、当サイトは責任を負いかねます。
実際の申告や手続き、具体的な判断が必要な場合は、国税庁・自治体等の公的情報をご確認のうえ、税理士などの専門家へご相談ください。

